帰還住民の不安拭う支援を - 日本経済新聞
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帰還住民の不安拭う支援を

東京電力・福島第1原子力発電所の事故で住民の避難が続いている福島県内11市町村のうち、田村市の一部で避難指示が1日解除された。避難指示解除の第1弾となり、117世帯357人が帰還できるようになった。

原発事故の被害を受けた地域の復旧、復興は遅れている。解除を新たな出発点にしてほしい。もとの暮らしを取り戻せるか、住民は多くの不安を抱える。それを拭えるよう、国は生活再建や雇用の確保などの支援を強めるべきだ。

指示が解除された田村市の都路地区では昨年6月に除染が終わり、8月以降は自宅での長期宿泊も認められた。住宅地などの放射線量も下がり、政府は安全に帰れる条件は整ったと判断した。

だが、すぐに帰宅する住民は半数程度にとどまっている。放射線への不安に加え、空き家だった住宅を補修できるか、商店や職場は再開するのか、見通しが立たないからだ。

放射線をめぐる不安を除くため、国は医師らを相談員として常駐させる。それはよいが、医療関係者だけでは住民の様々な心配事に応えられない。就業、就学や家計など生活全般の悩みについて相談に乗る窓口を設けるべきだ。

雇用の受け皿になる企業の誘致も欠かせない。地元自治体は原発依存から脱し、自然エネルギーを産業の柱に育てようとしている。国は税制優遇などで関連企業の進出を後押しする必要がある。

帰還を望まない人への支援も忘れてはならない。東電による賠償は帰宅しても避難を続けても、避難指示解除から1年で打ち切られる。故郷を離れた人を受け入れる公営復興住宅も足りない。国や自治体は住まいのほか職の紹介にも力を入れ、移住先での生活再建を支援すべきだ。

政府は川内村など6市町村でも避難指示の解除をめざしている。原発周辺からの避難住民はなお8万人を超える。戻る人、戻らない人の両方に目配りした支援策のモデルを田村市でつくってほしい。

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