点検・近畿地価(下)「点」で回復 揺らぐ法則

2014/3/22付
保存
共有
印刷
その他

大阪近郊の地価動向には「時計回りの法則」がある。人気の高い阪神間の地価がまず上がり、時計の針が動くように大阪府北部から東部、そして南部へと波及する。2013年は阪神間から北部の北摂にかけて上昇地点が拡大。14年は東部などに広がるとの見方が強かったが、針の動きは予想と異なった。

12日に増床開業した「くずはモール」が地価を押し上げた(大阪府枚方市)

14年の公示地価で北摂に続き住宅地で上昇地点が相次いだのは大阪府枚方市や同大阪狭山市、堺市など。ただ、府東部は0.6%下落、南部も0.3%のマイナスと反転せず、回復は広域ではなく限られた「点」にとどまった。法則が崩れかねない状況に、ある不動産鑑定士は「地価上昇の波が地域全体に行き渡らないかもしれない」と指摘する。

利便性を先取り

北摂に続いて上昇した地点の1つが、枚方市の住宅街「くずはローズタウン」。京阪本線樟葉駅から徒歩約9分と「駅近」で人気を集め、2.6%上昇と大阪府の住宅地では8番目に高い上昇率だった。

地価を押し上げたのが12日増床開業した駅前の大型商業施設「くずはモール」。核店舗の京阪百貨店に加え、複合映画館や家電量販店を誘致した。事業主体の京阪電気鉄道は「商圏は半径10キロを想定していたが、開業後1週間の時点で2倍の20キロ圏内から客が来ている」と分析する。駐車場の車は大阪と京都ナンバーが半々だ。利便性向上を先取りし地価が動いた。

同様に上昇地点が出た大阪狭山市は難波駅から南海高野線で約20分のベッドタウン。市が中心となって居住環境などを整えてきた。大阪では珍しい中学校での給食を1973年に始め、10年にはアレルギー除去食を導入する施策が子供を持つ家庭に支持された。住民やNPOなどによる「まちづくり円卓会議」を開くなど自治活動も支援している。こうした取り組みが評価され、人口は10年間で約2%増え、12年度の住宅着工件数も10年度より65戸増えるなど増加傾向にある。

不動産鑑定士の若崎周氏は「郊外の住宅地で地価が上がるのは駅に近く、環境の良い地域に限られる」と指摘する。府南部の千早赤阪村は鉄道が通っていないこともあり住宅地は3.8%下落と、府内で最も下落率が大きくなった。大阪都心部でマンション供給が増え、郊外から都心に移り住む人が増えていることも、郊外住宅地の選別を加速させている。

止まらぬ二極化

交通利便性が良く住環境改善なども進んだ地域は地価が上がり、それ以外との二極化する動きは京都や兵庫でも見られる。阪急西山天王山駅が13年末に開業した京都府長岡京市は0.2%上昇と6年ぶりに上向いた。京都市内も市営地下鉄沿線などの住宅地は引き合いが多い。

8.1%下落と兵庫県の住宅地で下落率が最も大きくなった川西市水明台は70年代に入居が始まった「オールド・ニュータウン」だ。13年から「上昇または前年並み」に転じた隣の伊丹市とは対照的な動きとなった。

不動産鑑定士の松永明氏は先行きについて「人口が比較的多い(現在42歳前後の)団塊ジュニア世代が住宅購入の意欲が強い時期(28歳から40歳代)を過ぎれば、選ばれた街しか地価は上昇しなくなるだろう」と予測する。阪神間は今後も地価は上がるが、大阪府内は駅から遠く買い物が不便な地域で地価が下がる可能性が高いとみる。地域の選別が一層顕著になっていきそうだ。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]