2019年8月26日(月)

見えてきた再稼働 九電・川内原発(中)

2014/3/22付
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全国の原発の先頭を切って安全審査の優先対象に選ばれた九州電力の川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)。今夏にも見込まれる再稼働に産業界から熱い視線が注がれる。

九電は設備投資を抑制してきた(管内の電線工事)

九電管内で数値目標を伴う節電が求められた2012年夏。自動車部品メーカーのユニプレス九州(福岡県みやこ町)はプレス加工向け空気圧縮機の一部を、軽油が燃料の代替機を借りて賄った。「1000万円は出費を強いられた」

経済の下支えに

13年も電力供給は綱渡りが続いた。原発のない夏を耐える工夫は九州の企業や家庭に負担を強いた。東福製粉は2年連続で設備点検を昼にして稼働を抑えた。

九電管内の昨夏の電力需要は最大で1600万キロワット程度だった。川内原発の出力は2基合計で178万キロワットと1割強を賄える。再稼働が夏場に間に合えば影響は様々な場面に及ぶ。

九電の設備投資は東日本大震災前の10年度に約2370億円(施設や電線の修繕含む)。震災後の12年度は約1600億円と3割強減った。投資の抑制傾向は13年度も続く。「もう少し(修繕を繰り延べて)辛抱できないかと我慢している」(瓜生道明社長)

配電工事を請け負う九電工は13年4~12月期で九電からの売上高が前年同期比約8%減った。配電関連システムを納める正興電機製作所も13年12月期通期の九電関連の売り上げが約2割減少した。

川内原発の再稼働をきっかけに「九電の経営が安定すれば設備投資も回復する可能性が高い」(正興電機の福重康行社長)。九電を頂点として成り立ってきた九州の「電力ピラミッド」。九電の投資抑制に歯止めが掛かれば関連産業への発注が増え、一定程度の九州経済の下支えは期待できる。

しかし九電を巡る状況が全て元通りになると考えるのは早計だろう。

「32年間ありがとうございました」。3月2日、福岡市内の九電の展示施設「九州エネルギー館」が営業を終えた。地元の子供たちに親しまれたが、経営難で売却が決まった。

昨年は九州国際重粒子線がん治療センターへの寄付を巡って松尾新吾相談役が「原発が早く運転すれば何てことはない」と発言して物議を醸した。九電が積み重ねてきた地域貢献は再び上向くのか。

電気料金は早期の引き下げが見込みづらい。昨春の値上げの際は6基ある原発のうち川内原発と玄海原発(佐賀県玄海町)3、4号機の計4基の再稼働を織り込んだ。老朽施設である玄海1、2号機が停止したままでは現行料金の前提を満たしているにすぎない。

続くコスト圧縮

さらに国の電力システム改革が電力会社の競争を促す方向で進む以上、九電は今後も厳しいコスト圧縮を迫られる。震災前には九電が九州の経済界で存在感を示し、関連産業の収益を支えた時代があった。その姿に完全に戻ることはもはや難しいとの見方が多い。

川内原発の再稼働は九電の経営再建の一里塚だ。九州の企業にとってはニューノーマル(新たな常識)を受け入れ、「九電に頼らない経営」の模索に走り出さねばならない出発点でもある。

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