2018年11月15日(木)

技術情報の不正流出を防ぐために

2014/3/16付
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日本企業の先端技術が狙われ、海外に流出している事実を改めて裏付ける事件が起きた。東芝と提携している米企業の元技術者が、東芝の営業秘密の研究データを転職先の韓国企業に不正に提供した疑いで、警視庁に逮捕された。

競争力の源泉である技術情報の流出はかねて指摘されており、今回の事件も氷山の一角といっていい。ことは一企業の経営問題のレベルにとどまらず、国益にもかかわる深刻な事態であり、官民挙げた取り組みが必要だ。

流出したのは東芝の主力製品である半導体メモリーに関する研究データだ。元技術者は米半導体メーカー、サンディスクの日本法人に勤務していた際に無断でコピーし、韓国の半導体大手、ハイニックス半導体(現・SKハイニックス)に提供した疑いがある。

警視庁は元技術者を不正競争防止法違反(営業秘密開示)の疑いで逮捕した。だがこの法律は罰則が軽いなど、抑止力が十分とはいえない。政府は現在、知的財産の保護に向けて新法の制定を検討しており、今回の事件も踏まえて、作業を急ぐべきだ。

一方、企業としては、まず自分の力でしっかり秘密を守る姿勢が大切だ。重要情報へのアクセス制限を徹底したり、社員と秘密保持契約を結んだりすることで、退職後も含めて、情報流出に歯止めをかける仕組みが欠かせない。

力のある技術者にはそれに見合う報酬や処遇を用意し、自社につなぎ留める努力も必要だ。全社員一律のリストラを実施し、優秀な技術者ほど不満を抱いて海外企業に転じたとされる電機産業の歴史を反面教師とすべきである。

そして現実に不正流出が確認できたら、損害賠償請求などをためらうべきではない。

日本企業は情報流出を「会社の恥」ととらえ、問題が公然化するのを嫌う傾向が一部にあるが、それは情報を得ようとする人や企業にとっても好都合なことだ。今回東芝は「情報流出による逸失利益は1000億円以上」として、損害賠償を求めてハイニックスを提訴したが、必要な措置だろう。

経済産業省の2012年の調査では「過去5年で情報が明らかに漏れた」「恐らく漏れた」と答えた企業が全体の14%に上り、かなりの企業が情報流出に頭を痛めている実態が分かった。各企業はいま一度、自社の体制を見直し、不正流出への備えを強める時だ。

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