2019年4月24日(水)

外国人頼み、再び(5)

2014/3/15付
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「型枠あげろ」と現場責任者の指示が飛ぶとベトナム人実習生のダオ・ティエン・タン(31)は素早く型枠を動かした。2月18日、埼玉県朝霞市にある朝霞浄水場。戸田建設などが受注した浄水設備の現場で、向井建設(東京・千代田)のベトナム人実習生4人が働いていた。

日本の現場で技能実習をするベトナム人(埼玉県朝霞市)

タンはリーダー格。「日本語は難しい」と苦笑いするが、現場の用語には体がすぐに反応する。向井建設がベトナムにつくった建設職人の職業訓練校で半年間、日本語と実技の訓練を受けた。既に180人余りが修了し、60人近くが日本で働く。

建設業などの人手不足を解消するため、政府は外国人労働者の受け入れ拡大に動き始めた。1月末には、官房長官の菅義偉(65)が外国人の活用について「年度内をめどに時限的な緊急措置の決定を」と踏み込んだ。

建設業で特に足りないのが型枠や鉄筋などの職人。この分野で実習生を育てる向井建設の取り組みは注目の的だ。ただ会長の向井敏雄(69)は違和感も抱く。「狙いは日本の建設会社がアジアで事業を広げるため。人手不足解消が目的ではない」

「何て読むの?」。浜松市の人材派遣会社、伸栄総合サービスで面接中、文書を読む17歳の日系ブラジル人少年が「返事」の文字を前に詰まった。「この子も読めないのか」。日系ブラジル人面接官の仲本サユリ(36)は心の中でため息をついた。少年は中学を中退していた。

同社には職を求めて多くの外国人が訪れる。「日本育ちで会話は流ちょうだが、読み書きは小学生以下」。最近はそんな若者が増えた。教育熱心な親の下で育ち正社員になれた仲本のような人は少数。「勉強へのやる気も将来の夢もない子が多い」

浜松は多くの日系人を受け入れてきた移民先進地。だが一時は2万人いたブラジル人はリーマン・ショックを境に帰国し、9千人台まで落ち込んだ。残った人は教育にまで気が回らない。「国も企業も単なる労働力としてしか扱わず、教育や社会保障を与えてこなかった」と社長の加藤和代(57)は憤る。

2000年代には製造業がブラジル人を多用し、今度は建設現場で実習生に頼む日本。静岡文化芸術大学の教授の池上重弘(51)はこんなリスクを指摘する。「いずれ帰るからと外国人を酷使すれば、将来はどこからも来なくなる」

(敬称略)

大島有美子、古賀雄大、近藤英次、増渕稔、友山宏済、戸田健太郎、伴正春が担当しました。

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