まほろばの王たち 仁木英之著 2000年代の「もののけ姫」

2014/3/13付
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(講談社・1400円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(講談社・1400円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

たまさか書店でこの一巻を見て、お買い求めになったあなたは、幸せな人だといえよう。

緑が眼にしみるような谷口博俊の装幀(そうてい)を見て、本書のテーマの一つがエコではないか、と想像された方は大正解である。

が、それだけではない。

大化の改新から5年、中臣鎌足が中央集権制を敷こうと躍起になっている時代を背景に、作者は恐らく彼の時代ものでは最高傑作というべき歴史ファンタジーを創りあげた。

都=俗、山=聖という構図の中で繰り広げられる役小角(えんのおづぬ)と物部(もののべ)の姫との冒頭譚(たん)は、特定の時間軸を越え、私達の歴史――過去・現在・未来――を映し出す。特に作者が熱を込めて描いているのは高度経済成長期にはじまり、以後、これだけ経済的に痛めつけられても懲りない日本人の驕(おご)りと、図らずも冷戦復活が起こってもおかしくない世界の現状である。

が、この一巻は、あくまでも麗筆に乗せて紡がれたファンタジーであり、理屈で説明しようとすると、かえってその奥深さが半減してしまいそうな気がしてしまう。

正に本書は2000年代の「もののけ姫」として読者を魅了し続けるだろう。

★★★★

(文芸評論家 縄田一男)

[日本経済新聞夕刊2014年3月12日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

まほろばの王たち

著者:仁木 英之
出版:講談社
価格:1,470円(税込み)

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