/

ジェフ・ベゾス 果てなき野望 ブラッド・ストーン著

アマゾン創業者の赤裸々な姿

インターネット時代を象徴する巨大企業、アマゾン・ドット・コム20年の歴史と、その創業者ジェフ・ベゾスの伝記である。秘密のベールに包まれていたアマゾンと創業者の赤裸々な姿が、社員や友人ら多数の関係者への綿密な取材に基づいて詳しく紹介される。奇才ベゾスの強烈な個性と、戦闘的と評されるアマゾンの企業文化を、伝記物にありがちな美化や偶像化、あるいはその対極の感情論的批判に陥らず、客観的な観察と分析によって本質に迫ろうとする帰納法的アプローチは秀逸である。

幼少期から天才ぶりを発揮したベゾスは、ウォール・ストリートのヘッジ・ファンドでキャリアをスタートしたが、ネットビジネスの可能性を信じて独立、起業した。当初家族的だった企業カルチャーも、会社の成長とともに変化していく。「有能でなければズタボロに捨てられ、有能ならもうダメというところまで働かされる」。アップルのスティーブ・ジョブズや、マイクロソフトのビル・ゲイツが、公の場ではユーモアたっぷりの魅力的な人物である半面、社内では部下を叱り飛ばすことで有名だったように、これはスピードの速いテクノロジー業界の風土病のようだ、と著者は指摘する。

企業としてのアマゾンの行動も強烈だ。価格競争に勝利して市場シェアを拡大するためには、取引先やライバルを崖から突き落とすこともいとわない。「全ては顧客のため」という錦の御旗を掲げながら、あらゆる方法で市場支配力を強めようとするベゾスは、先の先まで読むチェスプレーヤーのようだ。「アマゾンは伝道師か、金の亡者か」という問いに、「皮肉なことに、伝道師の方がたくさんお金をもうけてしまう」と涼しい顔でベゾスは答える。アマゾンは、今もネットのコングロマリットとして成長を続けている。

伝記として面白いだけでなく、ネットの進化で急変するビジネス環境の将来をどう読むか、不確実性の中で競争に打ち勝つための経営戦略はどうあるべきかなど、学ぶべき教訓が凝縮されている。ベゾス流に言えば、「読まなければ絶対損をする」一冊である。

(経済評論家 小関広洋)

[日本経済新聞朝刊2014年3月9日付]

ジェフ・ベゾス 果てなき野望

著者:ブラッド・ストーン
出版:日経BP社
価格:1,890円(税込み)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン