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自転車事故で高額賠償 保険で万が一の備え

 通勤や通学、買い物などで自転車を利用する人は多いが、事故のリスクも付きまとう。最近は自転車事故の加害者側に高額な賠償を命じる判決も相次いでいる。もしものときに備え、自転車保険に加入する人も増加傾向にあり、保険内容が拡充される動きなども目立つ。

自転車を運転中に散歩中の女性と接触し、寝たきり状態にさせてしまった小学生の親に裁判所が命じた賠償額は約9500万円――。神戸市内で発生した事故について被害者の家族らが起こした損害賠償請求訴訟で、一審・神戸地裁が13年、下した判決内容である。他の裁判所でも、自転車に乗っていた加害者側に数千万円に上る高額な賠償を命じる判決が相次いでいる。

車だと自賠責保険(強制保険)の加入が義務付けられており、任意の自動車保険に加入する人も多い。自転車には強制加入の保険がないが、いざ事故を起こすと深刻な事態に陥ることも十分ありうる。

加害者側に回ると、多額の賠償金の支払いが待っている。被害者としても加害者の経済状況により十分な賠償を受けられないケースもありうる。「自転車事故の場合、被害者、加害者ともに経済的な打撃も大きい」(渋谷良二・日本自転車普及協会常務理事)ことをまず認識しておきたい。

自転車メーカーのホダカは1億円の補償を付けた自転車を発売中

こうした状況に対応し、自転車を対象とする保険について新たな動きが目立つ。今年2月から最高1億円の保険を付けた自転車の販売を始めたのは大手メーカーのホダカ(埼玉県越谷市)だ。5月末(一部車種は3月末)までの期間限定ながら通勤・通学用やスポーツタイプの対象自転車を購入した人には、もれなく個人賠償責任保険が付く。

購入者がインターネット経由で加入手続きをすれば、最初の1年間はメーカーが保険料を負担する。自転車保険をセットにした狙いについて、同社の担当者は「メーカーとしても自転車保険の普及を進め、自転車マナーの向上も訴えていきたい」と話す。

従来の保険内容を昨年秋、拡充したのはau損害保険(東京・渋谷)。事故後の示談交渉代行や、事故で動かなくなった自転車を自宅などへ無料搬送(20キロまで)するサービスをつけた。無料搬送サービスは業界初の試みという。

保険期間も従来の「1年」ものだけでなく、「2年」ものも用意して保険料を割安に設定した。ファミリー向けのタイプも拡充し、子どもが自転車で事故を起こし、加害者になるケースにも対応可能にした。

三井住友海上火災保険の商品は、コンビニ店内で加入手続きができる利便性が売りもの。賠償補償額は最高1億円で示談交渉代行サービスもついている。昨年10月には個人型、夫婦型、家族型の3タイプの年間保険料を2940円~600円引き下げた。「趣味が自転車という30~40代の男性や、自転車通学する子どもを持つ親などの関心を呼んでいる」という。

紛争を裁判外で解決するための機関、自転車ADRセンター(東京都品川区)のトップも務める日本自転車普及協会の渋谷さんによると、自転車事故は信号機のない交差点で多い。「歩行中に自転車の気配を感じることができない高齢者が増えれば、ちょっとした接触事故でも大事故に発展しかねない」と危険性を指摘する。

昨年、道路交通法が改正され、自転車が道路の路側帯を走行する際は左側に限定された。「軽車両」としての位置付けが一段と明確化された格好だ。自転車と歩行者との事故の場合、自転車側の責任が100%と判断されたり、未成年でも過失の度合いが高くて賠償を求められたりするケースが今後も想定される。もしもの場合に備え、自転車保険の加入も視野にいれておくと安心だ。

(編集委員 堀威彦)

[日経プラスワン2014年3月8日付]

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