2019年6月27日(木)

春秋

2014/2/18付
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「北からおりてくる列車は花の匂いがするが、北へのぼっていく列車は汗の匂いがする」と書いたのは開高健である(「夏の闇」)。ヨーロッパを南北に行き交う人の流れをスパッと描写して無駄がない。欧州連合(EU)が抱えてきた南北問題まで垣間見る気がする。

▼北の代表がドイツなら南の大国はイタリアだろう。メルケル首相が9年目に入ったドイツと毎年のように首相が代わるイタリアは、それだけで対照的なのだが、そのイタリアに39歳の首相が生まれるという。「旧世代をスクラップする!」と改革を訴えるマッテオ・レンツィ氏。「壊し屋」と称される新世代の旗頭である。

▼そういえばおととしは経済学者が首相を務めていた、くらいは覚えていても、イタリア政界の生々流転についていくのは容易ではない。唯一、良くも悪くもこの人、というベルルスコーニ元首相は昨年11月に脱税で国会から追放された。レンツィ氏の年齢はちょうど半分、国民は待望久しい若きカリスマを見いだしたのか。

▼一服したといえ、イタリアはまだ「欧州リスクの震源」だと「北」の目には映る。行く末は彼ら自身にだって分からない。それでも新しいスターである。開高健は北へのぼる列車の光景を「人びとは声高くしゃべったり、叫んだりし……」と描いた。車内に限らぬ。政治をめぐる議論の声音は一段と高くなっているだろう。

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