春秋

2014/2/8付
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冬のオリンピックといえばグルノーブルを思い出す――というシニア世代が少なくない。1968年にアルプスのふもと、フランス南東部のその町で開かれた第10回冬季大会は、記録映画「白い恋人たち」と同名のテーマ曲によっていまも人々に強い印象を残している。

▼クロード・ルルーシュの演出は選手たちの何気ない表情を切り取り、吐く息にさえ質感を与えて「冬の五輪」の魅力を世界に伝えた。フランシス・レイのあの曲を口ずさんで、さあ次は日本で開催だと昭和の子どもたちも心をときめかせたのである。やがて「虹と雪のバラード」が流れて、アスリートはサッポロに集った。

▼そんな時代は遠く過ぎ、冬季五輪はこんどで第22回、初のロシア開催だ。なじみの薄かったソチなる地名もすっかり聞き覚え、雪と氷の上の闘いから目を離せぬ2週間である。開会式を待たずさっそく始まったフィギュア団体ショートプログラムでは19歳の羽生結弦選手がライバルを圧倒、この高揚こそ五輪だと胸が騒ぐ。

▼大会には「冬」ならではの清冽(せいれつ)な空気がみなぎっているはずだが、テロの脅威を前にそれとは別の緊張感も張りつめていよう。思えばサッポロが華やいだその年、ミュンヘンでの夏季五輪は血に染まった。備えを万全に、と無粋な言葉を記さねばならぬ現実をかみしめつつ、それでも白い恋人たちとの再会に気が気でない。

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