2019年7月18日(木)

生命科学の夢を広げる快挙だ

2014/1/31付
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理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーらによる新たな「万能細胞」の発見は、生命科学のフロンティアをひらく画期的な成果だ。なぜ万能細胞が生まれるのか、生命の不思議をしっかり解明して応用を目指したい。

弱酸性の溶液につけるといった単純な刺激で、マウスの細胞が様々な臓器の細胞に成長しうる「万能性」を得る。受精卵に近い状態まで細胞がリセットされると言ってもいい。にわかには信じがたく、学術誌が最初は研究論文の掲載を渋ったのもうなずける。

人間は受精卵から始まり、増殖と機能分化を繰り返して、数十兆個の細胞からなる複雑な構造と機能を備えた体に育つ。新発見は、生き物の成長と細胞分化の仕組みに潜む謎を根幹から解き明かす手がかりになるとみられる。

論文発表を機に、今回の成果を確認する検証が世界中で始まっているだろう。なぜリセットされるのか、細胞や遺伝子のメカニズムを調べる研究も進むはずだ。

応用面では傷ついた臓器を治す再生医療が思い浮かぶ。畜産への利用もあるだろう。実用を視野に研究するのは大事だが、人間の細胞で可能かなど、まだわからないことが多い。まずは基礎固めだ。容易に万能細胞がつくれると、クローン作製など使い方次第で生命倫理の問題が生じる恐れもある。

山中伸弥京都大学教授によるiPS細胞の作製に続いて、日本の科学者が世界を驚かせた大きな成果である。大事に育てたい。

小保方さんは大学の学部では化学を学び、大学院に進んでから生命科学の道を選んだ。山中教授も最初は整形外科医を志していた。異分野からの参入で生命科学の世界の常識にとらわれていなかったことが、大発見の背景にあるのかもしれない。若くして研究チームを任された点も共通する。

大発見の芽がどこにあるか、科学の世界では事前にはわからないことがある。基礎科学の伸ばし方や研究者の育成の面でも、今回の快挙は示唆するところが多い。

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