春秋

2014/1/29付
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ヤマメは渓流の女王と呼ばれる美しい魚だ。体長20~30センチ、ひなびた温泉宿などでその塩焼きを食べたことのある人は多いだろう。まさに山の味なのだが、まったく同じ種でも海に下るタイプがあって、名もサクラマスと変わる。大きさはヤマメの3倍にもなるという。

▼だから図鑑を見るとヤマメはサクラマスの陸封型、サクラマスはヤマメの降海型とある。サケ科にはこの類が多く、アマゴとサツキマス、ヒメマスとベニザケもそれぞれ同じ魚だ。淡水に棲(す)むか海をも領分とするか。その違いが見た目も味も変える。ニジマスもまた降海型は体長1メートル余の堂々たるサケの仲間と相成るのだ。

▼昨今はこれを海水養殖する技術が進み、大いに流通するようになった。すしネタのサーモンも、シャケ茶漬けの塩ザケも、じつは多くがこの魚だ。こういう現状に消費者庁はいたくご立腹らしい。食材虚偽表示問題を受けてまとめたメニュー表示のガイドライン案で、もともとの名であるニジマスと称するよう求めている。

▼シャケ茶漬けがニジマス茶漬けに? と嘆く声が出るのは当然だろう。味も姿もすっかりサケっぽい養殖サーモンである。いまさらニジマスと呼ぶのがどれほど世のため人のためになるのか……。そんなに厳密にしたいなら、このさい学名を使うよう命令したらどうだろう。オンコリンクス・ミキス茶漬けと呼べ、などと。

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