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親元暮らしという戦略 キャサリン・S・ニューマン著

6カ国での未婚者の生活を分析

私が日経新聞で「パラサイト・シングル」という言葉で、親同居未婚者の増大を指摘したのは1997年のことだった。それから15年以上経(た)った今、北欧を除く先進国で「親同居未婚者」の増大が見られるという。著者は、蛇腹を広げるように成人した子どもを受け入れる親の家族をアコーディオン・ファミリーと名づける。そして、本書は、先進6カ国における親同居未婚者の生活実態を分析している。

そこで紹介される事例は、日本の親同居未婚者とたいへん似ている。余裕がある親に支えてもらいながら声楽家を目指す夢追い型の未婚者もいれば、低収入のため経済的に親と同居しなければ生活できない未婚者もいる。親同居未婚者の中でも階層が分化していることが描かれている。日本と同じように親同居未婚者が多かった南欧だけでなくアメリカという自立を重んじる国でさえも、親という資源を利用せざるをえなくなった現実が意味することは大きいと考える。

親同居未婚者の増大の背景には、グローバル化の影響を受け若者の雇用が不安定になっているという先進国共通の状況がある。その中でも、文化や社会政策の違いによって、親同居未婚者に対する見方が異なることが興味深い。特に、若者に対する社会保障が充実する北欧では親同居未婚者はほとんどみられないのに、それが貧弱な日本や南欧、アメリカでは低収入の若者は親以外に頼るところはない。

終章で、日本では「フリーターが四十代になり、高齢の親の年金に頼るようになってきている。ゾッとするようなシナリオだ」と書かれている。日本の親同居未婚者は人数が多いだけでなく年齢的にも中年に達し、少子高齢化に歯止めがかからない。2012年時点で35歳から44歳の親同居未婚者は305万人もいるのだ。日本の親同居未婚者が将来どうなるのか、政府、社会はどのようなことができるのか、課題先進国として世界が注目していることは間違いない。

(中央大学教授 山田昌弘)

[日本経済新聞朝刊2014年1月26日付]

親元暮らしという戦略――アコーディオン・ファミリーの時代

著者:キャサリン・S.ニューマン
出版:岩波書店
価格:3,780円(税込み)

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