普天間移設の重要性を粘り強く説け
米軍普天間基地の移設の是非が最大の争点となった沖縄県名護市長選で、受け入れ反対を掲げた現職の稲嶺進氏が再選された。移設への市民の抵抗感が改めて浮き彫りになった。政府は移設の重要性を市民に丁寧に粘り強く説き続けなければならない。
名護市辺野古が移設先に浮上してから5回目の市長選だった。最初3回は移設推進派が勝ったが、その後2回は反対派が連勝した。民主党政権が「県外移設」というパンドラの箱を開けた影響が大きいと言わざるを得ない。
ただ、きっかけは民主党でも、市民が心の内に不安を抱えていた事実は無視できない。騒音や事故で迷惑を被るのではないか。なぜ沖縄はこれほど重い基地負担を強いられるのか。こうした疑問を放置すべきではない。
中国が海洋進出を活発化させ、北朝鮮の動向も不透明だ。米軍の沖縄駐留は日本の安全保障、さらに東アジアの安定に欠かせない抑止力である。国際情勢の現状をみれば、代替施設なしの普天間返還は現実的な選択肢ではない。
自衛隊は沖縄県の尖閣諸島などの防衛に力を入れ始めた。だが、島を奪われた場合に自力で取り返す能力はまだ不十分だ。在日米軍との協力体制を強化したい。
移設作業が頓挫すれば宜野湾市の市街地にある普天間基地を使い続けることになる。万が一、ヘリ墜落などの事故が起きれば、周辺住民に深刻な被害が生じかねない。県内の米軍駐留の反対論もかつてない盛り上がりをみせよう。
政府と稲嶺市長にはこうした現実を見据え、協議の席についてもらいたい。
移設に必要な辺野古沿岸の埋め立ては沖縄県の仲井真弘多知事が昨年末に承認した。市町村にはこれに関する法的な権限はない。
稲嶺市長は漁港の資材置き場の使用許可など関連するあらゆる権限を使って移設を阻止する構えをみせる。政治目的のために行政の権限を乱用するのは筋違いだ。
政府も市に権限がないからと力ずくで工事を始めるべきではない。市民の納得なしにできた基地では円滑な運用は望めない。
自民党は投票日直前に突如、名護市振興基金の創設などを提唱した。移設推進派候補が敗れたことで白紙撤回するのか。基地負担と地域振興をあからさまに絡めるような手法では市民との永続的な関係は築けまい。