2019年9月23日(月)

中国経済史 岡本隆司編 現代につながる変遷を俯瞰

2014/1/21付
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中国経済といえば、シャドウバンキングや不動産バブルなど今中国で起こっていることに注目が集まり、歴史に対して関心を寄せないのが普通である。しかし、現在は過去からの遺産を引き継いでおり、歴史を知らずして今を語れない。習近平が唱える「中華の復興」には明清時代の「中華帝国」の再建という狙いがあるようだし、そうした現政権の「夢」と指導者たちの心情を知るためにも、歴史に対する洞察は欠かせない。

(名古屋大学出版会・2700円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(名古屋大学出版会・2700円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

本書は、先史からの長い時間軸で中国における経済の発展と衰退、経済制度の推移を最新の研究成果も入れながら詳細に、若い歴史家たちが結集して叙述したもので、他に類書を見ない。各時代における税制や土地制度、戸籍制度、貨幣制度や流通、さらには農業技術や人口移動といった重要な制度や動きが取り上げられ、分裂と統合、拡散と集中を繰り返してきたこの「超大国」の経済を歴史的視野から俯瞰(ふかん)する意味でも、恰好(かっこう)の教科書になっている。たとえば、本書を通読すれば中国経済の重心が古代からどのように動いてきたのかがよく分かり、今日における沿海部と内陸部の格差が宋代以降の中原と江南との南北格差につながっていることが理解できる。

本書は都市化の進展とか、貨幣経済の発達といったような特定のストーリーを展開するよりも、あたかも「中国経済史辞典」のごとく事実の丹念な紹介に力点が置かれている。実際、中国史に登場してくる重要な個別的歴史出来事や制度が数多くのコラムに「テーマ」として解説されており、それ自体興味ある事典となっている。

取り上げるべきテーマが多すぎ、編者は取捨選択に苦労したと思われるが、たとえば開発経済の視点からいえば、有名な「ニーダム・パラドックス」、つまり世界に誇る三大発明(羅針盤、印刷術、火薬)をはじめ多くの先進技術を古代に生み出した中国で、なぜ近代技術が開花しなかったのかという問題など、その解釈には諸説あるだけに本書でも触れてよかった気がする。ともあれ、中国史だけではなく、現代中国とその経済に関心のあるものにとっても大変有用便利な本だといえる。

(東京大学名誉教授 中兼和津次)

[日本経済新聞朝刊2014年1月19日付]

中国経済史

著者:
出版:名古屋大学出版会
価格:2,835円(税込み)

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