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「首都圏の近未来」 人口データでみる (上)

高齢者の交流を促すNPO法人「一期一会」の施設(神奈川県伊勢原市)

医療や介護の必要な高齢者が、首都圏で爆発的に増える時代が目前に迫っている。2040年までに1都3県の75歳以上の人口は10年比でほぼ倍増。90歳以上は5.2倍で最も人口が増える年齢層になるなど、世界でも類をみない超高齢都市が出現する。人口減少には歯止めがかからず、医療や介護の仕組みを維持できるのか。そんな近未来を人口推計から探った。

東京都多摩市に今春、5つ目の特別養護老人ホームができる。3年前の調査ですでに300人近い待機者を抱え市民には待望の施設だが、「さらに増やせるのか」と阿部裕行市長の悩みは深い。

圧倒的な増加数

国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の代表的な将来人口推計である2040年のデータでは、40年の多摩市の高齢化率は38.2%。10ポイント以上高くなるが「サポートの必要な後期高齢者が大幅に増えることが最大の課題」という。25年には団塊の世代が75歳以上になるなどニュータウン開発で一気に増えた世代が高齢化。40年に多摩市では90歳以上が7倍の8千人と、10歳未満の子供の合計数より多くなる。

現在、市内では90歳以上の12%が特養で暮らすが、施設を増やすほど介護保険料も上がる。「在宅の高齢者を地域が支え合う仕組み作りが今すぐに必要だ」と阿部市長は危機感を持つ。

高齢化は全国共通だが、1都3県は増加数が他を圧倒する。40年にかけて75歳以上は285万人増える。全国平均の1.6倍に対し、1都3県はいずれも2倍前後で都道府県別の増加率でトップ7に入る。中でも90歳以上は118万人増え、147万人になる。

人口増加地域も例外ではない。横浜市都筑区は40年にかけて人口が25%増えるが75歳以上は3.2倍。政令市の区も含めた市区町村別では全国4位の伸び率だ。千葉市美浜区、横浜市青葉区も同様に3倍以上で、「人口増=若い街」という図式は当てはまらない。

「25年には首都圏の医療・介護は壊滅的な状況になる恐れがある」と警鐘を鳴らすのは国際医療福祉大学大学院の高橋泰教授。75歳以上の高齢者1000人あたりの介護関連施設のベッド数は現在1都3県で平均122床だが、「今がギリギリの水準。東京近郊の爆発的な高齢者の増加で40床以下の地域も続出し、全面的な介護の必要な独居高齢者でさえ、受け入れ先が無い状態が当たり前になる」とみる。

施設に土地提供

また、「人口当たりの医師数などが全国最低クラスの千葉や埼玉では、救急車を呼んでも搬送できなくなる」と予想。実際、千葉県では救急車を使う病院への搬送時間が11年に43.2分と、03年に比べ4割近く延びている。

高橋教授は「不安を感じた人の地方移住が自然に増える」とみる。地方では今後、高齢者人口も減り医療や介護が過剰になる地域が増えるためで、「地方も施設を活用でき双方にメリットがある」と介護移住が解決策のひとつと説く。

住み慣れた街で過ごしたい――。介護移住が取り沙汰される一方、こんな当たり前の願いをかなえようとする動きもある。神奈川県伊勢原市の介護施設「風の丘」に暮らす松木正子さん(89)は、「すぐそばが私の家。ここは顔見知りばかりで落ち着く」と語る。

40年以上前に開発した住宅地にある、全14室の入居者は地元の人ばかり。ある高齢女性がNPO法人の一期一会に土地を提供。建設費として周辺住民65人から6500万円を集め、「地元で暮らしたいという思いを実現した」とNPOの川上道子理事長は語る。

今では1回500円の高齢者交流施設の運営や弁当の宅配なども始めた。川上理事長は「介護保険制度を改善し、地域の知恵を集めれば、住みなれた街で暮らし続けられる」と語る。医療体制など課題もあるが「病院で体にチューブを入れる延命措置が幸せなのか。死生観も見つめ直しては」と問いかけた。

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