2019年1月24日(木)

春秋

2013/12/28付
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奴隷の平和より王者の戦争を! 評論家の亀井勝一郎は昭和16年12月8日の日米開戦に発奮し、雑誌「文学界」の企画「近代の超克」のなかでこう呼びかけた。ナショナリズムをたぎらせていたのは亀井ばかりではない。それまで冷静だった多くの識者も時局に酔った。

▼高村光太郎は「記憶せよ、十二月八日」なる詩を書いている。「この日世界の歴史あらたまる。/アングロサクソンの主権、/この日東亜の陸と海とに否定さる」……。欧米列強がもたらした近代という時代を、いまこそ乗りこえたい――。明治維新このかた、ながく日本人の心によどんでいた情念が噴き出したのだろう。

▼きっかけさえあれば、現在でもそういう思いは人々をとらえるのかもしれない。安倍首相の靖国神社参拝に異例の「失望」声明を出した米国への、まるで72年前の言説のような激しい言葉がネット空間に飛びかっている。外交的に孤立しようと日本はわが道を行け。そんなコメントは数知れず、歴史が巻き戻されたようだ。

▼ナショナリズムはしばしば暴走する。中国や韓国に加えて米国にもそれが向かうとすれば危機はいよいよ深まろう。自らのふるまいが災厄を呼びこみつつあるという自覚は、けれど安倍さんにはないようだ。普天間問題に区切りをつけた。景気は上向きで株価も高い。高揚するこの人を誰も止められず、その先に何が待つ。

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