2019年9月22日(日)

ものづくりを超えて 和田一夫著 トヨタ生産方式の独自性にせまる

2013/12/24付
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自動車メーカーは多くの業者と物流や資金の面で大量の取引をし、不具合があれば部品を迅速に交換しないといけない。定期的なメンテナンスも必須だ。消費の多様化に対応し、競争優位を発揮しようとすれば単一車名の内部で製品の多様化を志向することになり、オプション部品を多く抱えなければならない。さらに海外で生産するとなると国ごと、工場ごとに組み立て能力が異なっていたり、現地の政策で完成車の部品に現地産が入り込んできたりと、事態はさらに複雑となる。

(名古屋大学出版会・5700円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(名古屋大学出版会・5700円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

トヨタ自動車はこうした難度の高い問題をつきつける状況を克服し、「水が流れるようによどみなく生産する」仕組みを構築してきた。

「トヨタの自動車製造の要諦には品番管理がある」と著者は指摘する。何桁かの数字やアルファベットを使えば、簡単かつ効率的に部品を特定し、製造命令や発注・配送の依頼が可能になる。この数字、アルファベットで表現されるのが品番だ。著者によればトヨタでは2003年から世界拠点を専用回線で結んだ部品表データベースを使い、自動車部品を10桁のコードで管理し、仕様と価格、製造元、設計変更の履歴などがコンピューターで一覧できるようになっているという。

著者はトヨタに関わる「よくできた」話がまん延していることに我慢ならなかったに違いない。米国の「スーパーマーケット方式」が「かんばん方式」に展開したといった話だ。専門的な訓練を受けたはずの研究者がテキストに、こうした話を真面目に書くようになってはなおさらだ。「かんばん方式」とは何か、どこにその本質があるのか。トヨタの独自性とは何か、その独自性は経営の実際とどう関係しながら生まれてきたのか。俗流の議論と一線を画しつつ、これらの問いに正面から向き合い、歴史学者の作法で答えようと試みている。

さりげなく引用される資料の多くが入手困難。関係者に膨大な聞き取りをしているにもかかわらず証拠には使わない。禁欲的に筆を進める姿勢に心を打たれる読者は少なくないだろう。

(神戸大学教授 小川進)

[日本経済新聞朝刊2013年12月22日付]

ものづくりを超えて―模倣からトヨタの独自性構築へ―

著者:和田 一夫
出版:名古屋大学出版会
価格:5,985円(税込み)

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