2019年9月17日(火)

エネルギー政策を明示するときだ

2013/12/3付
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安倍政権のエネルギー政策の方向がよく見えない。原子力発電の必要性を訴えて政権に就き、民主党政権が掲げた「脱原発依存」はゼロから見直すと表明した。その一方で温暖化ガスの新たな削減目標を、原発ゼロを前提に示すなど、説明不足は否めない。

原子力規制委員会が原発再稼働に向けた安全審査を進めているため、規制委まかせでよいと考えているのか。エネルギーは経済や生活を支えている。原子力をエネルギー政策でどう位置づけるのか、安倍政権は明確に示すときだ。

コストの徹底検証を

東日本大震災から2年9カ月近くたち、電力危機は一時ほど深刻な状況ではなくなってきた。9月に関西電力大飯原発3、4号機が止まり、国内で稼働中の原発は再びゼロになったが、綱渡りながらも必要な電力は賄えている。

だが、危機が去ったわけではない。原発の代わりに火力発電を増やしたため、天然ガスなどの年間の輸入費用は震災前より3.6兆円も増えている。これは国富の流出を意味し、貿易赤字は常態化してきた。電気料金も上昇し、家庭や企業の負担を増やしている。

原発の安全性を確認したうえで一定数を再稼働させることが必要だ。規制委は新たな規制基準を定め、7原発14基を審査している。同委が中立の立場を貫き、科学的な根拠を踏まえて判断することは再稼働の大前提である。

それに加え、政権が中長期のエネルギー利用について、展望と戦略を示すことが欠かせない。

私たちは今後5~10年を、エネルギー政策の「調整と点検の期間」とするよう主張してきた。

その間、太陽光や風力、地熱など再生可能エネルギーの利用拡大に目いっぱい力を入れる。省エネも強力に推し進め、地球温暖化の原因になる化石燃料にはできるだけ頼らないようにする。

再生エネルギーが原発に代わる主役になれるかは、まだ不透明だ。原発はこれから依存度が下がるだろうが、原子力に携わる人材や技術をつなぎ留め、エネルギー供給源として残しておかなければならない。

「点検」期間中にやるべきことは3つある。

まず、原発の経済性を徹底的に検証することだ。震災前、国や電力会社は発電コストが安いとして原発を推進してきた。2年前、民主党政権時の有識者会議が示した試算でも、原発のコストは1キロワット時あたり9円弱と、天然ガス火力の同11円弱よりなお割安とした。

だが、そこに織り込まれなかった状況変化があり、「コスト神話」は揺らいでいる。

新規制基準を満たすのに必要な原発改修費は電力会社の総額で1.7兆円超と見込まれる。原発の運転が原則40年に制限され、それに近づいた原発は改修せずに廃炉にする選択があろう。ただ廃炉にかかる費用もはっきりせず、発電コストを押し上げかねない。

もちろん経済性だけで決められるわけではない。ウランを繰り返し使える核燃料サイクルを確立できれば、エネルギーの安定供給に役立つ。その技術を持つこと自体が安全保障上、意味があるとの指摘もある。こうした多様な視点からの検証が欠かせない。

廃棄物処分で国が前に

次いで重要なのが、再生エネルギーの実力を見極めることだ。

再生エネルギーによる電気を電力会社が買い取る制度が昨年始まり、太陽光発電の設備は2倍近くに増えた。ただし、この制度では家庭や企業が費用を負担している。いまは標準家庭で月約120円だが、5年後に3倍超に増えるとの試算もある。再生エネルギーによる電気を受け入れる送電網の整備にも多額の投資が要る。

家計や企業活動に過度な負担を強いず、再生エネルギーの利用をどこまで広げられるのか。政府がまず導入目標を定め、国民の負担を勘案しながら達成状況を点検することが欠かせない。

3つめが、使用済み核燃料から出る、放射能の強い廃棄物の処分に道筋をつけることだ。

電力会社と国は廃棄物を地下深くに埋設する考えだが、処分地が長く決まらず、原発は「トイレなきマンション」といわれ続けてきた。これまで原発を国策民営で進めてきた以上、電力会社まかせにせず、国が前面に出て処分場選びを早く始める必要がある。

将来の原発への依存度をどうするかにかかわらず、これまでの原発運転でたまった廃棄物の処分は避けて通れない。この問題は原発再稼働の議論とは切り離し、政治が真剣に向き合うべきだ。

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