「インサイド四国」 創業支援、高知に根付け

2013/11/30付
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最高1000万円の事業資金を提供する高知県の「こうちビジネスチャレンジ基金事業」第1回目の認定プランが決まった。最優秀はネット広告などを手掛けるウィリルモバイル(京都市)に決まり、5つの事業計画に計2600万円が支給される。このうち2事業は県外からの応募。中小・ベンチャー企業支援を軸にする新しい産業振興策が、停滞する高知県経済の起爆剤となることが期待されている。

「認定されたプランはすべて夢が感じられる。最優秀のウィリルモバイルは中山間地でのIT企業の集積を目標に掲げており、成功すれば県経済の活性化につながる」。高知県の尾崎正直知事は21日に開催された認定証授与式会場で期待を述べた。

受賞したウィリルモバイルはインターネット広告事業などが主力で、2013年4月期の売上高は3億8000万円。高知県では新たにスマートフォンを使って体温などを管理する機器やアプリを開発する拠点を開設する計画だ。

単に開発拠点を設けるだけではない。開設場所は過疎化の進む中山間地域を想定している。十河慎治社長は「アプリなどの開発は都会にこだわる必要がない。自分たちが成功することで、IT企業を呼び込み地域を活性化したい」と意欲的だ。

高知県産業振興センターが事業主体のビジネスチャレンジ事業は、高知県土佐清水市出身の森沢紳勝氏が社長を務める整水器メーカーの日本トリムが出資した1億円が原資。応募者が高知県出身かどうかは問わず、県内に本社や事業所を置くことが条件となる。

最大1000万円の事業化支援金だけでなく、気に入った場所が見つかるまで、空きオフィスの情報を提供する。今回は全国から93件の応募があり、約半数は県外からだった。

これまで高知県の産業活性化策の中心は大手企業の工場誘致が中心だった。進出企業には最高50億円を補助。だが、大きな成果は出ておらず、上場企業の進出はルネサスエレクトロニクスや住友大阪セメントなど5社程度にとどまっていた。

出資した日本トリムの森沢社長も「東京や大阪から近いとはいえず、南海トラフ地震による被害想定も小さくない。高知県は企業誘致には不利」と認める。ただ一方で、「創業や起業に不向きというわけではない」と強調する。

歯科材料の山本貴金属地金(大阪市)は22年前に高知県に製造拠点を移転し、当時年商27億円だったが、今では200億円を超えている。山本裕久会長は「県からの支援や豊富な知見を持つ地元の大学との関係構築が大都市よりはやりやすい。第二創業の地として高知に来ていなかったらここまで成長はできなかった」と話す。

高知県は製造品出荷額が11年が4995億円と4年連続最下位で、産業活性化は県政の大きな課題の一つ。評価委員長を務め、創業期の理想科学工業を支えた元専務の小渕昌夫氏は「創業期から支援するのはリスクが高いことは否定できない。ただ、誘致した大手企業は業績次第では出て行ってしまうが、創業期からいる企業は簡単には地元から出て行かない」と強調する。

高知県悲願の産業活性化が実現するかは、地域ぐるみで手掛ける新しい企業支援策の成否にかかっている。

(高知支局長 古宇田光敏)

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