FX、約定時間に厳しい視線 「10秒ルール」広がる

2013/11/13付
保存
共有
印刷
その他

外国為替証拠金取引(FX)で、売買成立の約定が注文時点より遅れる「スリッページ」への視線が厳しくなっている。10月16日に東京地裁が松井証券に対し、10秒を超えるスリッページは合理的ではないと認定。損害賠償を訴えていた個人に200万円等の支払いを命じた。背景には、顧客獲得競争が過熱し、FX業者に余裕がなくなっている事情もあるようだ。

FXでは相場変動による損失を限定するための「ロスカット」を設定する場合が多い。例えば円高局面で1ドル=97円に達するとドル売りを実行する設定とする。ところが実行が遅れて一段と円高が進み、実際に約定したのが同96円だと1ドルあたり1円の損になる。

FX関連の訴訟も扱う田村勇人弁護士は「許容範囲が10秒との基準ができた以上、業者側はシステムを整備する重要度が増した」と語る。

今回の裁判では(1)市場規模の大きいドル・円(2)米国の日中営業時間中(3)銀行間取引レートが急激に変化していない、という3条件を重視した。同条件が当てはまれば、今後も「10秒ルール」が踏襲される可能性がある。

松井証券は「従来より顧客注文を速くこなせるよう改善した」という。FX業者は通常、ドルや円の取引注文を銀行間の取引市場に任せている。ある外資系金融は「システムトラブルで注文実行に10秒以上かかることもあり、業者は複数の銀行と取引してリスク分散するのが常識」と語る。

一方、スリッページそのものは容認されている点に投資家は注意すべきだろう。今回の判決で、10秒以内は合理的な範囲内とされた。投資が巨額になる証拠金倍率(レバレッジ)をかけていると、数秒のずれで損失も巨大に膨らみかねない。

通貨の売値と買値の差である「スプレッド」の縮小競争も注意点だ。顧客争奪戦で今やドル・円ではスプレッドが1銭以下が多い。顧客にとってはスプレッドが狭い方が利益を確保しやすいが、業者の利幅は縮小する。

例えば、顧客が99円50銭で買った1ドルを業者が99円49銭で買い取るとする。業者は契約している金融機関が即座にドルを買ってくれないと、円高局面時には損失になる場合がある。自社では抱えきれない損失を顧客に負担してもらうのがスリッページと言える。

金融庁は業者向け監督指針の中で「広告でスプレッドまたは手数料が低いことを強調している場合」、スリッページが合理的な範囲かどうか留意事項として掲げている。

低スプレッドと高レバレッジを売りにする業者には落とし穴がないか、選ぶ際に注意が必要だ。

[日本経済新聞夕刊11月13日付]

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]