ストーカー被害に機敏に動け
警察署にストーカー被害を相談した当日の凶行だった。なぜ、尊い命を守ることができなかったのか。同じような悲劇を再び繰り返さないために、警察は検証を尽くさねばならない。
東京都三鷹市で高校3年の女子生徒が刺殺された事件で、逮捕されていた京都市内の21歳の男が殺人などの罪で起訴された。
2人は2年ほど前にインターネットの交流サイトで知り合い、交際していた。その後、付き合いを拒まれた男が一方的に恨みを募らせ、殺意を抱いたとみられる。
女子生徒から相談を受けた警視庁三鷹署は、ストーカー規制法による警告をしようとした。だが警告は伝わらず、生徒はその日の夕方、帰宅したところを自宅内に潜んでいた男に襲われた。
警告は生徒の求めによるものだったが、男の行為は相談の段階ですでに警告のレベルを超えていたのではないか。それまでのメールによる脅しや上京しての待ち伏せを詳しく検討し、危険が差し迫っているかを判断してほしかった。
本来、男女間の関係に警察が介入するのは望ましくない。このためストーカー規制法もまず相手に警告し、収まらなければ禁止命令を出し、違反すれば摘発する段階的な対応をとるよう定める。
しかしその間に犯行がエスカレートし、被害者の命が奪われたのでは元も子もない。警察は規制法の手続きだけにとらわれず、危険な兆候があればすぐに加害者を探しだして、刑法などによる摘発の可能性を検討すべきだ。
警察庁はストーカー事件に、警察署だけでなく、誘拐事件に対応する警察本部の部署などを投入するよう指示した。危険度の高いケースでは、警察組織の総力をあげて対処する必要がある。
ストーカー行為の経験がない被害者には、どの程度の危険が迫っているのか判断が難しい。警察がつきまといの実態をていねいに聞きだし、的確に判断しなければならない。それこそが犯罪抑止や捜査にあたるプロの務めである。