2019年9月18日(水)

時間がかかりすぎる再審判断

2013/10/23付
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司法の判断が大きく揺れて迷走し、長い年月を費やしたあげく、釈然としない結論が示された。そんな印象がぬぐえない。

三重県名張市で1961年、ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡した名張毒ぶどう酒事件で、裁判をやり直す再審を求めていた死刑囚の訴えを、最高裁が退けた。

7度目となる今回の再審請求で、弁護側は「ぶどう酒に混入されていたのは死刑囚が自白した農薬とは違う種類だった」と主張した。物証であるぶどう酒や、鑑定の詳しい記録は残っていない。

最高裁は、当時に近い状況で改めて行った鑑定の結果を検討したうえで、弁護側の主張は再審を始めるだけの明白な証拠にはあたらない、という判断を下した。

だがこの事件は、一審で無罪判決となり、今回の再審請求でも一度は開始の決定が出され、死刑と無罪を行き来する経緯をたどっている。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の大原則に照らして、疑問がまったく残らないとはいえないのではないか。

裁判所が出す結論にかかわらず、再審を始めるかどうかの段階でこれほど長い時間がかかるのは大きな問題だ。今回の決定まで、再審の請求があってから11年半、高裁で再審請求が認められてからでさえ8年半の月日がたった。

再審開始の決定に検察が異議を申し立て、取り消されれば弁護側が異議を唱える。再審の入り口で、こうした非公開の争いが延々と続くことが大きな原因だ。

一度再審が決まれば、すみやかに公開の場である再審の裁判に移り、そこで結論を出すという仕組みに改められないだろうか。裁判員制度の導入で通常の刑事裁判の迅速化が進むなか、いたずらに長引く再審の問題は際立つ。

近年、DNA型鑑定の精度が飛躍的に進歩するなど、将来の再鑑定で過去の判決が見直される事態が想定される。裁判で証拠となった資料や鑑定の記録をどう保存するかも、名張事件の裁判が突きつけた大きな課題である。

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