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世界一の「成人力」に創造性の磨きを

調査結果を率直に喜びたい。経済協力開発機構(OECD)が世界24カ国・地域の16~65歳を対象に、日常生活や仕事で必要な力を調べた国際成人力調査(PIAAC)で日本が大健闘をみせた。

調査は今回が初めての試みだ。テストの3分野のうち、日本は読解力と数的思考力で下位に有意な差をつけてトップとなった。

OECDは15歳の生徒を対象に学習到達度調査(PISA)を実施している。PIAACはその大人版といえるが、たんに知識の有無を問うテストではない。日常生活のさまざまな場面での基本的なスキルを測るのが目的だ。

そうした能力の高さが証明されたことは、日本の義務教育の充実ぶりや文字・活字文化の広がり、企業内教育のきめ細かさなどを裏付けていよう。日本人に特有の生真面目さや気配りなどもそれを支えているかもしれない。

東京への五輪招致を実現させたのも、この成人力だったのではないか。東日本大震災の被災地で黙々と復興に取り組んでいる人々の存在も日本の底力を示している。今回の結果は、日本の「普通の人々」の強さを物語るものだ。

もっとも、調査結果からは読み取れない課題もある。与えられたテーマには熱心に向き合うが、創造力や独創性となると心もとないのが日本だ。過去のPISAの調査結果をみても、総じて応用力が弱いことははっきりしている。

たとえば米アップル創業者、スティーブ・ジョブズ氏のような異才を生み、受け入れる教育風土や社会の柔軟さをもっと学びたい。アップルの製品には人間の感性に訴える「かっこよさ」がある。及第点でよしとする横並び意識からは出てこない発想だろう。

日本人にそうした素地がないわけではない。アニメや漫画、日々の生活を快適にするさまざまなモノやサービスは世界の注目を集めている。ユニークな才能の開花を、硬直的な教育システムや企業風土が妨げてはならない。

調査によると、日本の中卒者の読解力は米国やドイツの高卒者よりも高い。戦後日本の発展には、そういう人々の信頼のおけるスキルも大きく貢献してきたはずだ。その基盤を維持しつつ、新たに創造性や多様性といった点数化しにくい価値を育んでいきたい。

中間層は分厚く、「出る杭(くい)」も伸ばす――。すぐれた成人力に磨きがかかるだろう。

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