/

夏を赦す 長谷川晶一著

消えた甲子園の夢、それから…

(廣済堂出版・1600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

1学年下の部員の不祥事により対外試合辞退。高校3年の7月、甲子園予選出場の最後の機会は突然に断たれる。元日本ハムの好投手にして明朗な口調の解説者でタレント、岩本勉の切なく苦い青春の幕切れである。

あれから24年、歳月の緩衝を得て本書は世に出た。大阪・阪南大高校の仲間たちのあの時とその後を気鋭のライターが追えば、そこには人生の厳しさと確かさ、無慈悲と慈悲が絡まるように浮かび上がった。

岩本は、在日韓国人の豪気な父の期待に応えながら、自身の成功に「後ろめたさ」を覚えてきた。仲間の進路には「公式戦の実績なし」の不利がつきまとった。多くは野球を離れ、食品用機器修理、整体師、鶏卵業界などおのおのの道を歩む。遠い夏への思いにも、それぞれの違いはあった。

書名に「赦(ゆる)す」とある。そこにいたる心の動きこそは、そのまま元部員たちの社会における奮闘の軌跡と重なる。読後感の心地よさの理由だ。

ある競技のある出来事の奥に市井の普遍を知らされる。スポーツ書らしい力だろう。無名の友を愛し続ける有名(岩本)の言動はまぶしい。帯の小さな写真に泣けた。

★★★★

(スポーツライター 藤島大)

[日本経済新聞夕刊2013年10月9日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

夏を赦す

著者:長谷川 晶一
出版:廣済堂出版
価格:1,680円(税込み)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連キーワード

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン