2019年8月21日(水)

春秋

2013/10/8付
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人間は口のなかに猛獣を飼っているらしい。「口の虎は身を破る」といえば言葉を慎まないために身を滅ぼす大事にいたることだ。人に愛を伝え、勇気を与え、希望をもたらすことのできる言葉というものが、操りそこねると凶暴なけだものとなって災いを巻き起こす。

▼その猛獣をあえて、これでもか、これでもかと解き放って省みない人たちがいる。東京・新大久保のコリアンタウンなどで「死ね」「ぶっ殺せ」などと叫びながらデモを続けている集団だ。差別や憎しみをあおる表現はとどまるところを知らず、紙面が汚れるからいちいち書かないが精神の荒廃ここに極まるといっていい。

▼ヘイトスピーチと呼ばれる、こうした無法を京都市の朝鮮学校周辺で繰り返していた団体側に対して裁判所が街頭宣伝の禁止と損害賠償を命じた。人種差別撤廃条約に照らして違法とする判決だ。表現の自由との兼ね合いも問われるなかで、こんな言葉の暴力はやはり許されないと断じた司法にまっとうな市民感覚をみる。

▼欧州ではヘイトスピーチを直接禁止する法律をもつ国もある。判決を機に日本でも立法を求める声が高まりそうだが、言葉を強権で封じることの是非は簡単には答えが出ない。口の虎は身を破る――。まずしき言葉を放つ者たちはきっと自身に報いを受けようが、国を、社会をも破りかねないこの虎たちをどう退治しよう。

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