2019年5月21日(火)

『平家物語』の再誕 大津雄一著 近代化が求めた「民族叙事詩」

2013/10/3付
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(NHK出版・1000円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(NHK出版・1000円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

西洋の古典には、いわゆる英雄叙事詩がある。古代ギリシャでは、『イーリアス』や『オデュッセイア』が、うたわれた。ローマ時代の『ポエニ戦争』も、その一例にあげられる。あるいは、中世に成立した『ローランの歌』なども。

日本に、しかしはっきりした英雄叙事詩は、見いだせない。じっさい、日本へやってきた西洋人は、しばしばそのことを書きたてた。たとえば、『日本文学史』(1899年)をあらわしたアストンらが。

西洋の先進国にはある叙事詩を、日本はもっていない。その可能性は、多くの文学研究者をうろたえさせた。日本でも、それらしい古典を見つけなければならない。それが見あたらなければ、日本は西洋なみの国になれなくなってしまう、と。

こうした状況のなかで、『平家物語』は民族的な叙事詩という役割をあたえられる。詩文とは思えぬ物語が、叙事詩としてまつりあげられた。のみならず、この背伸びは戦時をへて、ごく近年までたもたれる。戦後の名だたる研究者たちも、この点では右往左往させられた。社会の荒波は、こういう浮世離れのした世界にもおよぶのだと、思い知る。

★★★★

(風俗史家 井上章一)

[日本経済新聞夕刊2013年10月2日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

『平家物語』の再誕―創られた国民叙事詩 (NHKブックス No.1206)

著者:大津 雄一
出版:NHK出版
価格:1,050円(税込み)

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