2019年6月27日(木)

春秋

2013/9/29付
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土地には住所がある。大抵の人は自宅の住所を記憶していることだろう。何県の何市の何町というふうに、大から小へと地名が連なる。引かれた境界は人間が決めたものだ。もし、お上の定めた線ではなく「川」を軸に大地を区切ったら、どんな地図ができるだろうか。

▼慶大で生物学を教えてきた岸由二さんが提唱する「流域住所」は、そうした試みの一つだ。何という川の流域に自宅があるか調べ、覚えておくのだ。岸さんの研究室の例だと、鶴見川の支流である矢上川の、さらに支流である松の川の流域に建つ。こうした川の名の連なりを第2の住所として意識しておこうと呼びかける。

▼どう役に立つか。例えば大雨が降ったとき、行政単位の警報では、遠くの自治体の名を目にしても危機感はわきにくい。実際は上流が豪雨なら下流も危ない。流域という見方を気に留めておけば、警報の中身にも目が向く。ふだんから同じ川の流域への関心が高まるので、河川管理や生物保護でも協力しやすくなるという。

▼古来、安全な暮らしのために、気象や地形など自然環境の知識は不可欠だった。台風18号の被害も記憶に新しい。秋の行楽期、家族で身近な川の流れをたどる、上流や下流を歩く、といった小探検はどうだろう。見慣れた名の川が意外に太かったり細かったり。そんな驚きを入り口に、水の流れに関心を深める好機になる。

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