ビルマ・ハイウェイ タンミンウー著 中印を結ぶ「回廊」としての価値

2013/10/1付
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 読み進めるにつれ、かつて訪れたミャンマー(ビルマ)南部の暑く湿った空気の記憶がよみがえった。最大都市ヤンゴン(ラングーン)で土ぼこりの道を夕方、ロンジーと呼ばれる布を腰に巻き、花を持ってパゴダ(仏塔)に向かう男女。線香の匂い。こうした“等身大”のミャンマーの姿を想起させるような描写が各所にある。

(秋元由紀訳、白水社・3000円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)
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(秋元由紀訳、白水社・3000円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

 2008年から10年ごろにかけての旅の記録が基盤になっているが、単なる旅行記ではない。中国とインドという二大国にはさまれたミャンマーという土地の価値を地政学の視点からとらえる。それに気づいて領土的な野心をかき立てられた英国、戦前の日本などの姿も歴史家の目で描いている。

 軍政から民政への華麗な体制転換を遂げたミャンマーはいま、世界から「最後の手つかずの投資先」として注目を集めている。企業や投資家が重視しているのは人口が約6400万人の大きな市場としての将来性だけではない。帝国主義の時代の列強と変わらず、中国とインドを結ぶミャンマーの「回廊」としての役割に期待する。

 ミャンマーは、カンボジア、ラオス、中国南部などを含めたメコン川流域一帯のサプライチェーン(供給網)の一部である。その西には将来、人口が世界一になるといわれるインドが控える。こうした新興国経済の可能性の大きさを疑う投資家はまずいないだろう。

 著者のタンミンウーは米ニューヨークで生まれた40歳代の知識人だ。ウ・タント元国連事務総長を祖父に持ち、米欧の教育機関で幅広い教養を身につけた。

 訳者はリアルタイムのミャンマー情報をインターネットで提供するビルマ情報ネットワークの幹部である秋元由紀氏。同氏に助言をしたのがミャンマーの近現代史を専門とする上智大学教授の根本敬氏ら。いずれも著名なミャンマー専門家で、翻訳の文章、歴史考証は申し分ない。

 著者はプロローグで「これは裏口から入るアジアの話である」と記した。なるほど、正面玄関から書いた経済や政治のリポートとあわせて読めば、ミャンマーの実像が一段と鮮明になる。得られる観点はビジネスにも役立つはずだ。

(編集委員 加賀谷和樹)

[日本経済新聞朝刊2013年9月29日付]

ビルマ・ハイウェイ: 中国とインドをつなぐ十字路

著者:タンミンウー
出版:白水社
価格:3,150円(税込み)

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