2018年7月21日(土)

強制起訴は見直しが必要だ

2013/9/28付
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 検察が独占してきた起訴権限に民意を反映させる。それが強制起訴制度の狙いである。検察が起訴しなかった人について、くじで選ばれた市民でつくる検察審査会が「起訴すべきだ」と2度議決すれば被告となり、裁判が開かれる。

 だが起訴されなかった理由にかかわらず、すべての事件・事故が強制起訴の対象になりうるいまの仕組みでは、問題が大きすぎないだろうか。そんな危惧をあらためて抱かせる判決があった。

 2005年にJR福知山線で起きた脱線事故をめぐり、神戸地裁が井手正敬元相談役らJR西日本の歴代社長3人に無罪を言い渡した。事故は予測できなかった、との判断である。3人は業務上過失致死傷罪で強制起訴されていた。

 裁判長は「誰ひとり刑事責任を負わないのはおかしいとの考えがあるかもしれないが、個人の責任は厳格に考えなければいけない」と遺族に言い添えた。この言葉に制度の問題が凝縮されている。

 刑法は個人の刑事責任しか問えない。だが多くの部署、社員、システムがからんで起きる事故で、個々人の過失や責任の範囲を立証するのは難しい。市民感覚としては納得しにくいが、だからといって検察審による起訴だけ有罪の基準を下げるわけにはいかない。

 会社の体質を指弾し、再発防止につなげる。こうしたことを刑事裁判に大きく期待することもできない。行政や民事訴訟の仕組みの改革を含め、有効な対策を考えていくべきではないだろうか。

 過去の強制起訴の例をみても、同じように現在の刑事裁判のあり方となじまない例がある。検察の段階で不起訴になった後、長い間裁判を強いられる負担は大きく、このまま放置すべきでない。

 同じく司法改革の一環として新たに導入された裁判員裁判や法曹養成制度は、踏み込みが足りないもののすでに見直し作業が始まっている。強制起訴についても、審査する対象や議決に至った経緯の開示など、制度の全般にわたる見直しに取りかかるべきである。

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