2019年2月20日(水)

信頼醸成へ原子力規制委はもっと努力を

2013/9/19付
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原子力安全の確保という重い責任を肩に原子力規制委員会が発足して1年。少ない陣容で原発の新規制基準の制定など大きな仕事をこなした。しかし福島第1原発事故で損なわれた安全規制の信頼回復はまだ途上だ。改めるべき点がいくつかある。

規制委をつくる際に最も重要視されたのは独立性だ。旧原子力安全・保安院は原子力推進の経済産業省の傘下にあり、安全最優先の判断ができていなかったとの強い反省があったからだ。

規制委は権限の強い「三条委員会」として発足、独立性と中立性の確保では前進があった。会議の公開も評価したい。

ただ独立性を強調するあまり、電力会社や原発立地自治体などとの対話を欠いたのは反省点だ。相手がだれであれ、立場の違いをこえて信頼を得るには、自らの判断をていねいに説き異論にも耳を傾ける姿勢が求められる。信頼こそ安全規制の原点であり、対話抜きでは信頼醸成は望めないだろう。

活断層評価から過去の安全審査に関わった専門家を排除したのは適切だったろうか。過去との決別を印象付けはしたが、結果として科学的な議論を深めることにつながったとは思えない。作業の進め方も場当たり的だ。活断層評価の基準や手順を整理すべきだ。

規制委は「高い見識を備えた常識人」の合議が本来の姿だろう。細かすぎる議論は事務方に任せ、委員たちが一段高い総合的な見地から判断を下すのが望ましい。

ところが、現状は合議制の長所が生きていない。委員が手分けして様々な会議で陣頭指揮をとり、委員会はそれぞれの結論について了解を得る場になりがちだ。田中俊一委員長には委員のありようを再考してもらいたい。

また、福島原発の汚染水への対処で後れを取ったのは否めない。もっと早い段階で東京電力に強く警告を発していれば、問題の広がりを防げた可能性はある。目配りが足りなかった。

規制委の課題の多くは事務方である原子力規制庁の人手と能力不足に起因する。独立行政法人の原子力安全基盤機構と規制庁の効果的な統合を急ぎ、内部の人材育成にも力を注ぐ必要がある。

規制委自身が常に自己改革を続ける努力も必要だが、責任感と専門能力を併せ持ち、国民の信頼に足る組織に育てていくのは政府全体、政治の責任である。

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