2018年7月23日(月)

完全版 甲子園の詩 敗れざる君たちへ 阿久悠著 球児の喜怒哀楽、生々しく

2013/8/30付
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(幻戯書房・2800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(幻戯書房・2800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

 その日のその試合をひとつの詩に。1979年の夏、スポーツニッポン新聞の連載「甲子園の詩」は始まった。

 怪物的作詞家は、死の前年(2006年)まで一時の休載を除き、球児たちの喜怒哀楽、あるいはそこに収まらぬような感情を言葉に換えた。

 /熱狂 興奮 情熱 奇跡という/きらびやかな死語との再会を/

 80年の大会、長崎県の瓊浦(けいほ)高校に捧(ささ)げた一節である。死語の蘇生。スポーツを描く妙味だ。

 稀代(きだい)のヒット量産者、阿久悠は、情報と情緒の人である。熱狂や興奮を冷笑せず、奇跡の存在を信じ、時代から絶対に離れようとしない。だからこそグラウンドの普遍をつかまえられた。

 ここに収められたのは磨かれ寝かされた「詩(し)」ではない。新聞のせわしない締め切りに追われるジャーナリズムであり、もっと生々しい「詩(うた)」だ。記録性を得たゆえんはそこにある。

 君らの熱闘の翌日から/甲子園の季節は秋になった/

 野球は追憶なり。大会を終えた時期こそ本書を繰るのにふさわしい。

 都道府県別の出場校・選手索引など丹念な編集がうれしい。

★★★★

(スポーツライター 藤島大)

[日本経済新聞夕刊2013年8月28日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

甲子園の詩 完全版 敗れざる君たちへ

著者:阿久悠
出版:幻戯書房
価格:2,940円(税込み)

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