春秋

2013/7/25付
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「つぎつぎになりゆくいきほひ」。なんだか呪文のようだが、政治学者の丸山真男が唱えたフレーズである。主体的に何かを「する」よりも、自然に次々に「なりゆく」ことを重んじ、その勢いに身を任せる――。それが日本人の思考と歴史の流れを解くカギだという。

▼古典をもとに丸山が見いだしたこの概念は、たしかに近年のめまぐるしい政治の転変にも当てはまろう。自民党をぶっ壊すと小泉さんが叫んだ時代があった。首相1年交代の時期があった。民主党の政権があった。そして昨年末からは安倍さんの天下となり参院選も圧勝だ。まこと「つぎつぎになりゆくいきほひ」である。

▼勢いに乗って存在感を増してきたのが、既得権をしっかり守ろうとする「古い自民党」だ。郵便局、農協、医師会、建設業……。比例代表の当選者をみても、昔ながらの業界が支えた面々がずらり並ぶ。遅ればせながらの参加となったTPP交渉で、コメなどの「聖域」死守にばかり気が向くのも当然のなりゆきだろうか。

▼「歴史意識の『古層』」と題するくだんの論文で、丸山はもうひとつ指摘をした。日本人が過去や未来よりも、もっぱら「いま」を尊ぶというのだ。勢いのある「いま」が良ければあとさきは考えない。これもまた懸案の先送りを続ける現在の日本のことのようだ。「1強政治」の地表に、古層がぬうっと顔を出している。

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