首相は逃げずに経済改革断行を

2013/7/23付
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明るさを取り戻した日本経済を安定軌道に乗せ、実感を伴う成長を長期的に実現してほしい。参院選の圧勝で政治基盤を固めた安倍晋三首相に国民が期待するのはそうしたことだろう。

経済を本当に再生させるにはまだ多くの壁を突破しなければならない。首相は国民の信頼を裏切らないよう、逃げずに経済改革を断行すべきだ。

規制改革が試金石

安倍首相は22日の記者会見で、「国民が求めているのは全国津々浦々まで実感できる強い経済を取り戻すこと。成長戦略などの実行なくして成長なしだ」と述べた。その認識は正しい。

アベノミクスの3つの矢のうち、大胆な金融緩和という第1の矢と、財政刺激という第2の矢が円安・株高や内需の拡大につながったのは確かだ。だが、これを一過性の景気浮揚に終わらせないためには、経済の潜在的な成長力を高める政策、つまり第3の矢が欠かせない。

しかし、反対が少なく、効果がわかりやすい金融緩和や財政刺激策に比べて、構造的に成長力を高める政策の実行には様々な抵抗がある。これにひるんでおざなりな施策にとどめれば、経済活性化の効果は出ず、成長機運もしぼんでしまうだろう。

安倍政権が6月に打ち出した日本再興戦略は力不足という見方が多い。首相が一丁目一番地と位置付けた規制改革が腰砕けになっているからだ。医療、教育、農業など潜在的なニーズや成長力が大きい分野で、本格的な規制緩和には踏み込まなかった。

参院選では規制改革に反対する団体の支援を受けた自民党候補が多く当選した。既得権を持つ勢力に配慮して改革を先送りし、新しい需要を生み出す企業のビジネスの芽をつめば成長はおぼつかない。このハードルを越えられるかが政権にとって試金石になる。

環太平洋経済連携協定(TPP)にどう向き合うかも重要だ。投資や知的財産権などについて質の高いルールを実現し、工業関税の撤廃をめざすことはアジア・太平洋諸国の活力を取りこむうえで欠かせない。TPPは同時に日本への投資や農業改革を促すきっかけにもなりうる。

安倍政権は、関税の聖域確保といった守りに徹するのでなく、日本経済や国民全体の生活向上にどう結びつけるかという大きな視点で交渉に臨むことが求められる。

今後の日本経済にとって大きな懸念材料は政府が抱える債務の膨張である。長期政権を視野に入れる安倍政権は、この問題から目をそらすわけにはいかない。

最初の試金石は消費税増税だ。首相は会見で消費税率を来年4月に5%から8%に引き上げるかどうかについて「デフレ脱却と財政再建の両方の観点から、秋にしっかり判断する」と表明した。

日銀が異次元の金融緩和の一環として長期国債の大量購入に踏み切る中で、「政府は日銀に財政の穴埋めをさせるのでは」という疑念も市場の一部に出ている。必要以上に長期金利が上昇しないようにするには政府が財政規律を堅持する姿勢を示す必要がある。

消費税増税は財政健全化の一里塚と言える。経済が大幅に落ち込む見通しがない限り、延期すべきではない。

社会保障費抑えよ

ただし、消費税増税だけで財政を立て直すのは不可能だ。財政悪化の主因は高齢化に伴う社会保障費の膨張である。この伸びを抑えるためには、収入や資産のある高齢者にはより大きな負担を求める改革が欠かせない。民間の活力を引き出す成長戦略で成長力を持続的に高め、税収を増やしていくことも財政再建にとっては大事だ。

長期政権を展望するならば、国と地方の関係を見直し、地方の活性化につなげるための包括策や、法人税率の引き下げを含む活力重視の税制改革に取り組んでいくことも重要だろう。

産業界にはアベノミクスに期待する半面、中国や韓国との関係悪化を懸念する声も少なくない。領土や歴史認識を巡って冷たい関係が続けば、双方の経済にとってマイナスになる。日中韓自由貿易協定(FTA)交渉などを通じ局面打開に取り組むことが望まれる。

痛みの伴う政策や抵抗の大きい政策は首相への支持率や信任が高いときでないと実現しにくい。経済再生へ向けて改革を進めるには、今がまさにチャンスである。目先の人気取りに走らず、必要な改革実現のために思い切って指導力を発揮する。それが安倍政権に課せられた歴史的な使命である。

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