ビッグデータの正体 ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、ケネス・クキエ 著 情報の蓄積が生み出す新たな価値

2013/7/16付
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多くの人はビッグデータを技術の問題と捉え、ハードウエアやソフトウエアに目を奪われている。本書は、ビッグデータはIT(情報技術)業界の新たなバズワード(はやり言葉)だ、という冷やかしを吹き飛ばす迫力を持つ。ビッグデータの世界では、蓄積してきたデジタル情報は全く新たな用途に生かされ、新しい価値を生む。人々の物事の理解の仕方や考え方を大きく変え、価値の生み出し方に再考を迫る。このパラダイムシフトの原動力こそが、ビッグデータの正体なのだ。

(斎藤 栄一郎訳、講談社・1800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)   

(斎藤 栄一郎訳、講談社・1800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)   

スモールデータの世界でも、データに基づく物事の理解は少なからず行われている。物事の仕組みについて仮説をたて、標本に基づく精度の高い少数のデータを収集・分析し、検証することで、因果関係を明らかにする。

一方、ビッグデータの世界では豊富なデータを全部、使う。多少の精度の粗さは問題にならない。世の中を理解する上で、ある現象について中身のある有効な仮説がなくてもよい。世の中の仕組み、個人の行動、消費者の購入内容、部品の故障時期などが、ビッグデータの相関関係を基にした予測により明らかになる事例が次々と紹介される。

こうなると世の中のありとあらゆるものがデータ化されていく。スモールデータの世界では、データは本来の用途に使用した後、いつ捨ててもよいものだった。ビッグデータの世界では、本来の価値を発揮した後に残るデータの「オプション価値」が重要になる。これに気づくかどうかが、企業の命運を握る。ユーザーが残す"デジタルの足跡"を既存サービスの改善や新規サービスの開発に役立てるグーグルの事例がその典型として紹介されている。

ビッグデータに関する多くの楽観論の一方で、懸念も示されている。スモールデータの世界を前提とした人々の考え方や制度をビッグデータの世界に合わせるために何を変えたらよいか。例えば、ビッグデータによる予測精度が高まる中、プライバシーや自由に及ぼす影響をどう考えたらよいか。本書の価値の高さは、この視点の複層性にある。

(三菱総合研究所未来情報解析センター長 小野由理)

[日本経済新聞朝刊2013年7月14日付]

ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える

著者:ビクター・マイヤー=ショーンベルガー, ケネス・クキエ
出版:講談社
価格:1,890円(税込み)

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