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あとかた 千早茜著

学生と居候の風変わりな日常

(新潮社・1400円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

松本君のことが気にかかる。中学3年のときに父親が左遷されて九州に単身赴任してから必死で勉強。高校時代はコンビニでバイトし、休み時間は勉強にあてるので、ガリ勉と馬鹿にされ、友達もいなかったが、背が低くてスポーツも出来(でき)ない自分を守ってくれるのは勉強しかないと考えてきた。結局父親は首にならず、松本君もいまは国立大学に進んで2年生。奨学金を貰(もら)うことを条件に一人暮らしをしている。

なぜかその部屋に居候しているのが、藤森。中学のときに援助交際しているとか、薬物もやっているとか、ひどい噂の超美人。松本君は、彼女が男を部屋に連れ込んだ現場に遭遇しても、作った食事が不味(まず)くても、「友達だから」と何も言わないので、とうとう藤森が怒りだす場面がある。「こんな思っていること言い合えない関係なんて友達でも何でもないじゃん」

不倫している人妻、その夫、年上男と同棲(どうせい)している少女――さまざまな人の日常のドラマを鮮やかに描いていく連作集だが、読み終えると松本君のことが気にかかる。彼がなかなか理解されないことに胸がちくんと痛くなってくるのだ。あれ、どうしたんだろう。

★★★★

(文芸評論家 北上次郎)

[日本経済新聞夕刊2013年7月10日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

あとかた

著者:千早 茜
出版:新潮社
価格:1,470円(税込み)

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