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新基準を第一歩に原発の安全を競え

原子力規制委員会が原子力発電所の新規制基準を決定した。7月8日に施行される。

東京電力福島第1原発の事故を受けて、核燃料が溶けるといった過酷な事故への対策などを電力会社に義務づけた。原発の寿命を原則40年と定めた。

新基準は原発の再稼働に道を開く。同時に基準適合が難しい原発をふるいにかける役割を担う。新基準を満たすための多額の安全投資が引き合わない原発は廃炉の判断を迫られることになるだろう。

この新基準を電力会社には安全確保への必要最低限の要求と心得てもらいたい。

日本原子力産業協会の服部拓也理事長はスロバキアの原発を訪れて驚いたという。過酷事故対策を完了、事故時に50人が5日間たてこもって対処する第2制御室も備えていた。日本ではこれからだ。

日本の原発の安全確保は世界水準から周回遅れだ。電力会社も規制当局も「安全神話」に慢心し必要な努力を怠った。加えて日本は地震など自然災害のリスクが欧米より大きい。電力各社には規制基準を満たしたうえで、さらに高い水準を目指し互いに安全を競い合う前向きな姿勢が求められる。

規制委は発足9カ月で4千ページに達する新基準をつくった。しかし完璧な基準というものはない。総合的な観点から不足は補い、不要な事項は省くなど、常に基準を見直し最善を心がける必要がある。

基準づくりの過程では、規制委と電力会社や立地自治体との間で十分な対話を欠いていた。よい基準をつくり、厳しい審査をすることだけが規制委の仕事ではない。原子力規制への信頼回復こそ最も大事な使命のはずだ。コミュニケーション不足ではその達成はおぼつかない。改めてもらいたい。

安全を守る最後の砦(とりで)は人間だ。東日本大震災の時、福島第2原発では増田尚宏所長(当時)が所員らに「帰宅しないでくれ」と呼びかけた。福島第1も第2も東電や協力企業の従業員の懸命の働きで、さらに深刻な事態に陥るのを回避した。自衛隊や消防、警察の支援も大きかった。

再び同様の事故に直面した際、社員や隊員を現場に飛び込ませることができるか。この備えと覚悟なくして世界最高水準の安全はありえないだろう。新基準の要求を超えることかもしれないが、電力会社や政府には真剣に対応を考えてもらいたい。

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