環境金融論 藤井良広著 環境問題の評価基準を軸に考察

2013/6/25付
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長らく「環境と金融」というテーマを探求してきた著者ならではの力作である。典型公害から気候変動に到る環境問題とその対策の多様性を縦糸、各金融セクターによる様々な取り組みを横糸に、膨大な情報から織りなされる考察は、全編を通して一貫した視点で貫かれている。この一貫性を支えるのは、「BS(財務諸表)計上=内部化=価格付け」と名付けられた評価基準であり、著者は、これを環境金融が機能するための前提条件に位置づけ、本書を通底するフレームワークとしている。

(青土社・2400円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(青土社・2400円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

環境問題の本質は、環境財利用のコストが過小評価されることによる過剰消費であり、これを適正な水準に誘導(外部費用の内部化)するための政策手段は、これまでも様々に論じられてきた。著者は、このパブリックな内部化プロセスと、常に裁定取引の機会を狙い有利な投資対象を物色している金融市場が備える機能の「組み合わせ(官民連携)」に環境金融の本質を見出(みいだ)している。

古くは1960~70年代の米国におけるアスベスト訴訟やスーパーファンド法から最近話題の固定価格買い取り制度や生物多様性評価にいたるまで、内外の様々な取り組みを素材に、この評価基準に従って環境金融の有効性を仕分けしていく展開は明快である。この視点は、国際統合報告評議会(IIRC)で検討中の「統合報告」に象徴される、これまで企業価値評価に十分に反映されてこなかった非財務的な情報への関心を深めつつある実務の現状にも符号する。

本書の活用法は多様であろう。(1)環境問題の歴史を金融という視点から改めて振り返る(2)投資、融資、保険それぞれの金融セクターにおける取り組みを概観してみる(3)第7章における様々な提言を道標に環境金融の新たな方向性を考える――などだ。環境金融の一端を担う評者としては、多くの金融関係者が本書を手に取り、担当業務以外の情報に触発されることに期待したい。環境金融が著者の期待通りに機能するためには、セクターを越えた連携が重要であるが、そのためには金融界で進みつつある大きな変化を大局的に理解することが欠かせない。その機会を提供してくれる好著である。

(日本政策投資銀行環境・CSR部長 竹ケ原啓介)

[日本経済新聞朝刊2013年6月23日付]

環境金融論 持続可能な社会と経済のためのアプローチ

著者:藤井良広
出版:青土社
価格:2,520円(税込み)

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