白雪姫には死んでもらう ネレ・ノイハウス著
村社会の不気味さ際立つ

この著者の初紹介作品『深い疵(きず)』は、いかにもドイツ・ミステリーらしい過去の因縁ものだった。今回は、英国田園ものの味わいプラス警察群像ドラマのつくりだ。タイトルからもわかるように、グリム童話の現代編といったモチーフが隠されている。
2件の少女殺人の罪で10年服役していた青年が出所する。「犯人」の帰郷を待っていたかのように、1人の死体が発見される。「犯人」への憎悪のみならず、冤罪(えんざい)の疑いもが再燃し、田舎町は興奮のるつぼとなる。そこに、被害者の少女と瓜(うり)二つの少女が登場し、事件の第2幕を予感させる。――といった導入だ。
錯綜(さくそう)する人間関係、常軌を逸した人物たち、あちこちとふくらむサイド・ストーリー。大作ではあるが、事件の中心軸は、わりと単純でわかりやすい。力のこもった展開で、悠々と寄り道を繰り返しながらも、読者を飽きさせるところのないタッチは見事。
それにしても、軍隊の基地跡とか、温室の地下室とか、死体の隠し場所がいくらでもある村社会の不気味さは出色だ。白雪姫の寓話(ぐうわ)が滅びないのも、むべなるかな。酒寄進一訳。
★★★★
(評論家 野崎六助)
[日本経済新聞夕刊2013年6月12日付]
★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった
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★★☆☆☆ 価格の価値はあり
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