2019年4月23日(火)

世界を変えた17の方程式 イアン・スチュアート著 人類の進歩支えた数学の歴史

2013/6/11付
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人類の進歩を17の方程式を通して語ろうという野心的試みである。科学技術の発展が数学に支えられていることは誰もが知っているが、方程式が表に出てくることはほとんどない。しかし著者は方程式こそ「人類文明の一番の推進役だった」という。したがって本書のテーマは、単なる数学の解説ではなく、方程式から見えてくる歴史の真実とでもなろうか。

最近の社会的話題や身近な日常生活への言及の多さも本書の特色の一つだ。エレクトロニクスと量子力学の関係は常識だが、デジタルカメラの画像データ圧縮とウェーブレット数学。カーナビゲーションに使われる全地球測位システム(GPS)と相対論などなど、著者のいう方程式の「隠れたパワー」になるほどと納得させられる。

東日本大震災による福島第1原発事故と放射性元素の半減期の計算、日本の探査機"ひてん"のミッションとカオス理論など、日本に関する記述も興味を引く。

電磁気学を扱った章がとくに素晴らしかった。電力や電波は、日常生活に欠かせないものでありながら、その理論は言葉だけの解説ではわかりにくい。マクスウェル方程式の意味から入る本書の説明方法は、一般書としては斬新で優れていると思う。熱力学、相対論、量子力学の章も含め、本書は現代物理学の基礎知識への恰好(かっこう)の入門にもなっている。

もちろん著者は数学者であり、数学についても熱く語る。「科学者にならなくても、重要で優れた方程式の詩情と美しさを味わうことはできる」という言葉に、著者の本音と願いがこめられている。

最後に本書は、方程式は無限連続の数学の中で発展してきたが、これからは有限離散の数学のアルゴリズムに取って代わられるかもしれないと、数学の近未来を展望している。変貌する社会の中で数学も変わり行くのであろう。

30代から素敵(すてき)な数学啓蒙書を数多く手がけてきた著者も、今年で68歳になる。本書は数学の視点に立って、その関心を社会や日常、さらには人間の文化史にまで広げた著者円熟の一冊である。

(大東文化大学准教授 吉永良正)

[日本経済新聞朝刊2013年6月9日付]

世界を変えた17の方程式

著者:イアン・スチュアート
出版:ソフトバンククリエイティブ
価格:2,310円(税込み)

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