少子化論 松田茂樹著 雇用環境改善と教育費軽減を提言

2013/6/10付
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 少子化対策が始まってから約20年がたつのに、なぜ出生率は本格的な回復に至っていないのか。本書は、少子化の研究者がこの問いに対して独自の見解を記した力作だ。

(勁草書房・2800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)
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(勁草書房・2800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

 著者は、少子化を抑制できなかったのは、「女性の社会進出に伴う仕事と子育ての両立の困難」を少子化の主因とした従来の捉え方のためとみる。その結果、これまでの少子化対策の主な対象は「妻が正社員として働く共働き世帯」であって、育児期に大多数を占める「夫は仕事、妻は家庭」という性別役割分業をする「典型的家族」ではなかったと指摘する。

 実際、著者の分析によれば、子供が小さいうちに就労を希望する女性は、短時間勤務を含めても2割程度であり、大多数は子育てに専念することを希望している。また、実態をみても、第1子出産後に就業継続(育児休業利用を含む)している妻は2割強であり、専業主婦が約8割を占めるという状態は80年代後半からほとんど変わっていないという。

 両立困難が主因でないとすれば、なぜ少子化が進むのか。著者は、非正規労働が増えるなど若者の雇用が劣化して未婚化が進んだことと、子育てや教育に掛かる経済的負担が重いために典型的家族において出産・育児が困難なことを指摘する。

 ではどうすべきか。著者は、非正規雇用者に対する職業紹介・職業訓練の拡充や、幼児教育から大学までのトータルな教育費を軽減することなどを提言する。また、非正規雇用者の育休取得が難しい実態を踏まえて、非正規雇用者向けの育休の創設などを挙げている。安倍政権では育休3年を提言するが、非正規雇用者は視野に入っているのだろうか。本書には、傾聴すべき有意義な提言が多い。

 一方で、子育て期の夫婦が「性別役割分業を望んでいる」という見方は、議論のあるところだろう。こうした意識は、男女の賃金格差が大きいなど「男性稼ぎ主モデル」に基づく社会構造がもたらしているのかもしれない。また、若者の雇用が劣化して男性の稼ぎに頼れないのなら、共働きしやすい両立環境を整備すべきであり、未(いま)だに両立支援が不十分という見方もあるのではないか。

(みずほ情報総研主席研究員 藤森克彦)

[日本経済新聞朝刊2013年6月9日付]

少子化論: なぜまだ結婚・出産しやすい国にならないのか

著者:松田 茂樹
出版:勁草書房
価格:2,940円(税込み)

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