先端医療研究の実効性高める司令塔を

2013/6/5付
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政府は先端的な医療研究や新薬の開発を指揮する司令塔づくりを検討している。世界最大の医療機関として、がん研究などをリードする米国立衛生研究所(NIH)をお手本に、「日本版NIH」をつくろうという構想だ。

日本では山中伸弥京大教授のiPS細胞をはじめ先端医療で優れた成果が出ている半面、臨床応用では出遅れた。基礎的な成果を臨床に橋渡しする仕組みが弱いことや、欧米に比べて厳しい規制が足かせになっている。こうした状況に政府が危機感を強め、克服に動き出したこと自体は評価できる。

だが米国のまねをするだけでは問題は解決しない。日本の成長戦略として科学技術をどう伸ばし、そこで先端医療をどう位置づけるのか、大局的な議論が要る。拙速で日本版NIHをつくるのでなく、科学技術研究のあり方に立ち戻って制度設計を考えるべきだ。

政府の有識者会議がまとめた案では、健康・医療戦略の司令塔として首相や閣僚からなる「推進本部」を設け、研究や臨床を担う新たな独立行政法人を新設するとした。その母体として国立がん研究センターなど既存の医療機関を整理統合する案も浮上している。

日本の先端医療分野の研究費は年3500億円と、国の研究開発費の4分の1を占める。いまは基礎は文部科学、臨床は厚生労働、医療機器は経済産業省と縦割りで、基礎研究が応用に結びつきにくい。政府が基礎から応用まで一貫した戦略を描き、予算を一元的に管理して効率的に配分する仕組みづくりは確かに重要だ。

しかし、首相直属の推進本部を設けることだけがその答えではあるまい。科学技術政策の司令塔としてはすでに総合科学技術会議があり、安倍晋三首相はその機能強化も表明している。

司令塔づくりはそれ自体が目的ではなく、大事なのは実効性の高い施策を打ち出すことだ。予算の見直しのほか、新しい医薬品や機器の臨床試験や安全承認の手続きを迅速化するなど、規制改革に切り込むことも欠かせない。

研究や臨床を手掛ける新組織ももっと時間をかけて議論すべきだ。政府は独立行政法人全体の見直しを進めており、理化学研究所など約20ある研究開発型法人の改革が焦点になる。国から独法、大学への研究費配分も見直し、研究開発投資を産業競争力の強化につなげる戦略を描いてほしい。

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