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フーガ 黒い太陽 洪凌著

性差越境の独特な世界観

5年ほど前、作品社から『台湾セクシュアル・マイノリティ文学』全4巻が刊行され、紀大偉と共に、あまりにも鮮烈な印象を残したのが、本書の著者、洪凌だった。

過激で濃密な女性同性愛の雰囲気もさることながら、アーシュラ・K・ル=グウィンのような欧米の女性SF作家をはじめ日本のアニメ『攻殻機動隊』や少女マンガなどを深く読み込み、独自な世界を切り拓(ひら)いていることに目を見張った。

本書も、グローバリズムの21世紀を颯爽(さっそう)と駆け抜ける斬新な感性に貫かれた短編集。

母娘の渾然(こんぜん)一体となった愛憎を残酷なまでに詩的に綴(つづ)った「玻璃(ガラス)の子宮の詩(うた)」のような純文学風味から、語り手の性差が男女どちらとも明かされないまま告白される殺人劇「月での舞踏(ダンシングオンザムーン)」、吸血鬼と人狼(じんろう)の咬合(こうごう)ファンタジー「暗黒の黒水仙(ダフォディル)」、高度な政治学によって構築された核弾頭満載の人工惑星を語る「肉体錬金術」といったハードコアSFまで、スタイリッシュでデカダンな10編。

高度資本主義社会に花開いた台北文化のスキルの高さと、性差越境の視点から紡ぎだされる異世界像は異様な迫力。心より堪能した。櫻庭ゆみ子訳。

★★★★

(ファンタジー評論家 小谷真理)

[日本経済新聞夕刊2013年6月5日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

フーガ 黒い太陽 (台湾文学セレクション1)

著者:洪 凌
出版:あるむ
価格:2,415円(税込み)

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