春秋

2013/5/8付
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SF作家にして生化学者のアイザック・アシモフが言ったそうだ。科学で耳にするもっとも胸躍る言葉、それは「私は発見した!」ではなく「へんだぞ……」である、と。科学の発見にたやすいものなどない。第一歩はつねに「へんだぞ」に始まる、ということだろう。

▼それにしても、この「へんだぞ」は門外漢の胸まで躍らせる。陸地でしかつくられない花崗(かこう)岩がブラジル沖の大西洋の深海底から大量にみつかった。その不思議が、かつてここに大陸があった証しではないか、その大陸とは長く伝説のなかにのみあり続けたアトランティスでないのか、という推論に連なっていくのだから。

▼アトランティスは謎の塊である。豊かで繁栄を極めていたというのに、1万2千年前、一昼夜にして海に沈んでしまった。1万年近くも後になってギリシャ哲学者のプラトンはそう書いた。彼は「真実の話」だと断っているのだが、ほかにはなんの記録もなく、いまに至るまで存在を裏づけるものは一つも出てきていない。

▼そんな大陸はなかった、と考える方がいつの世もおそらく多勢であって、今回も人の暮らしや文明の痕跡が姿をあらわしたわけではない。が、深海の底にはないはずの花崗岩があったのだから、やはりへんな話である。不可解の先に何を発見できるのか。よしんばそれがアトランティスでないにしても、おおいに気になる。

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