「八月の砲声」を聞いた日本人 奈良岡聰智著  第1次大戦中、在独の苦悩

2013/5/9付
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(千倉書房・3200円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

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第1次世界大戦で、日本はドイツと敵対した。当時、青島(チンタオ)にいて日本の捕虜となったドイツ人をとりあげた読み物は、すくなくない。彼らがベートーベンの第九をはじめて日本で演奏したことも、しばしば話題になる。

しかし、同じころドイツに滞在していた日本人のことは、あまり知られていない。これは、当時のドイツで辛酸をなめさせられた日本人の、歴史ドキュメンタリーである。日独が交戦状態へといたる前に、多くの日本人はドイツからぬけだした。しかし、にげそびれて収監された者も、けっこういる。この本を読めば、彼(か)の地で右往左往をさせられた日本人の様子が、よくわかる。

医師の植村尚清も、ドイツでは80日におよぶ幽閉を余儀なくされた。また、その回想を自分のノートに書きとめている。この未公刊記録もおさめられており、これがじつにおもしろい。抑留施設で植村は、民族や階層のことなる多様な人々と、逆境をわかちあった。その描写が、よくある留学体験記にないひろがりと深みを、あたえている。

うもれた記録に光があてられたことを、新しい戦時研究のあらわれたこととともに、よろこびたい。

★★★★

(風俗史家 井上章一)

[日本経済新聞夕刊2013年5月8日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

「八月の砲声」を聞いた日本人 - 第一次世界大戦と植村尚清「ドイツ幽閉記」

著者:奈良岡聰智
出版:千倉書房
価格:3,360円(税込み)

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