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脊梁山脈 乙川優三郎著

快感覚える意外な展開

最近は、こんな話になるとは、との驚きが少なくない。村山由佳『天翔る』がそうだった。学校でいじめられている少女と、子供のころのトラウマで悩んでいる女性が知り合うところから始まるので、これはそうして癒やされていく話だなと思って読み進むと、エンデュランスという馬のレースの話、しかも激しい話になるからびっくり。本書もその口だ。意外な方向にどんどんズレていく。それが快感だ。

矢田部信幸が復員してくる途中で世話になった小椋康造を探す話が中心なのである。となると、康造を探す旅の途中でまたいろいろな人と触れ合う話だと思っていると、その小椋康造が木地師ということで、木地師の歴史を探索する話になっていく。

木地師とは、ろくろを使って器やこけしを作る職人のことで、歴史の深い闇に埋没しているが、それを著者は掘り起こしていくのだ。物語の表面では信幸の恋愛も語られていくが、底を流れる歴史の闇が行間から立ちのぼってきて、しんとした静けさを伝えてくる。

時代小説一筋できた著者の初めての現代小説だが、特異な題材を扱った意欲作として読まれたい。

★★★★

(文芸評論家 北上次郎)

[日本経済新聞夕刊2013年5月8日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

脊梁山脈

著者:乙川 優三郎
出版:新潮社
価格:1,785円(税込み)

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