春秋 - 日本経済新聞
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春秋

緊迫した接戦、あまりに手痛い主将のオウンゴールではないか。2020年の夏季五輪開催を目指す東京都の猪瀬直樹知事が、米紙のインタビューでライバルのトルコ・イスタンブールをおとしめるようなことを言った。勝負の帰趨(きすう)を一撃で決めかねない大失態である。

▼「イスラム教の国が共有するのはアラー(神)だけで、お互いにけんかをしている」「トルコに若者がたくさんいたところで、若いうちに死んでしまったらあまり意味はない」。招致合戦でライバル都市を批判することは禁じられている。そんなルールを持ち出すまでもなく、そこには品位も異文化への敬意も感じられない。

▼さすがに知事は発言を撤回し、謝罪したが、「インタビューの98%は東京のPRだったが、最後の雑談がクローズアップされてしまった」と釈明したそうだ。これでは釈明にならぬ。記者なら誰だって、話が一通り終わった後の雑談の一言一言に狙いをつけている。フッと緊張が解け、本音が透けることがままあるからだ。

▼ノンフィクション作家として名をなした知事である。自身もそうして貴重なコメントを引き出したことがいくらもあろう。今回の発言ばかりは、はしなくも透けてみえた知事の本音、でないことを祈るしかない。オウンゴールが招致チームに「やってられないよ」といった厭戦(えんせん)ムードを生まないよう、これも祈るしかない。

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