春秋

2013/4/25付
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大正から終戦のころまで三菱グループを率いた岩崎小弥太は英国ケンブリッジ大学への留学経験があった。国際派らしさが表れたのが、1920年、設立後まもない三菱商事の幹部を集めて開いた会議でのスピーチだ。ひと言でいえばフェアプレーを説いたものだった。

▼競争にのめり込み、成績をあげるため手段を選ばないようになっては残念だ。不正には正義を、権謀には正直をもって、我々は行動すべきである――。取引先に頼み込み、特別な計らいで商品を買ってもらう例も多かったなかで、サービス向上で顧客の信頼を得ようと訴えた。強調したのは良心に恥じない行いの大切さだ。

▼三菱自動車の軽自動車のエンジンオイル漏れをめぐるリコール(回収・無償修理)問題で、国土交通省は法令違反はなかったとの調査結果を出した。うその報告などはなかったためだ。だが同社は何度も不具合の情報を寄せられながら、よく調べずに、リコールに踏み切るのが後手に回った。とても良心的な対応ではない。

▼企業に求められる規範として、法令を順守する「コンプライアンス」がある。本来の意味は「あるべき姿にしたがう、ならう」だ。消費者や取引先の立場になって、何をすればいいか考えることがこの言葉の真意である。岩崎の呼びかけから90年以上たつが、三菱グループの隅々にまで浸透させるのは容易ではないようだ。

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