2019年6月26日(水)

競争力強化へ農協も大胆な改革を

2013/4/7付
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農業を成長産業として再生していくためには、農地法などの規制緩和とともに、農家と密接な関係を持つ農業協同組合を変えていく必要がある。

大規模な農業法人や強い野菜農家はすでに農協を離れ、独自に販路開拓などに乗り出している。小規模農家にはなお農協の助けが要るとしても、本来の目的である農業の強化に向け、地域の農協も大胆な自己改革を急いでほしい。

農家支援の原点に帰れ

日本の農協組織は、統制機関としての色彩が濃かった戦前の産業組合や戦時中の農業会を引き継いでいる。そのため全国農協中央会(JA全中)や全国農協連合会(JA全農)を頂点に都道府県ごとの組織があり、その下に全国約700の地域農協がぶら下がる中央集権型の構造を持つ。

金融や生損保まで、幅広く手掛けるのも日本の農協の特徴だ。

中央組織で目立つのは政治的な主張だ。安倍晋三首相が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を表明した3月15日も、全中は「全国の農業者とともに強い憤りをもって抗議する」との声明を発表した。全国一律のコメの生産調整見直しにも反対している。

だが、これまでの枠組みを維持しようとすることが、農協の原点である農業生産力の増進や農家の経済的な地位の向上につながるのだろうか。企業との連携が求められる中で、中央組織が経済界と対立する構図も農業の強化のためには好ましくない。

様々な方針が強力な中央組織から地域の農協へ伝達されていく仕組みは、農家が生活と事業の改善に向けて立ち上げる協同組合の原点からもかけ離れている。農協の体制のあり方を抜本的に見直すときだろう。

個々の農協に求められるのは大胆な意識改革だ。政府は2001年から05年までに、全農に対して計7回の業務改善命令を出した。その過程で政府がまとめた報告書が課題を列挙している。

(1)硬直的な販売手法を見直し、経営感覚を持つ(2)農協外部の人材を登用し、倫理を守る体質へ改善する(3)合理化に努め、その利益を組合員である農家に還元する――ことなどだ。

農協に示された課題は、いずれも当たり前のものだ。あとは農協自身がどれだけ改革への意識を高め、実行するかにかかっている。

肥料販売での大口割引の導入や、流通コストの引き下げといった改善策は評価できる。市場開拓に取り組み、商品開発に力を入れる農協も増えてきた。一方で、改革ぺースの遅い農協もある。

まず、農協が競い合う体制が必要だ。政府は02年に農協法を改正し、農協が管轄地域を広げたり、新しい農協を設立したりすることで農家が複数の農協から「いい農協」を選べる仕組みをつくった。

こうした制度改革を活用し、それぞれの農協が農家の利便性や負担軽減を競うようになれば、改革への意識は高まるはずだ。

農協は、農産物の共同販売や資材の共同購入で独占禁止法の適用を除外されている。ただし、それは農家が農協に自由に参加し、脱退できる環境が前提だ。融資などで農家を縛ることは許されない。

お金の流れを透明に

公正取引委員会は07年に、農協にどのような行為が独禁法違反になるかの指針を示した。農協は改めてすべての職員に注意を喚起し、逸脱行為があれば公取委は速やかに是正を促してもらいたい。

農協が手掛ける金融業務は、預金量で90兆円にのぼり、メガバンクと肩を並べる。だが、金融庁の加わる農協への検査は知事の要請が条件となり、実施は一部にとどまる。政府もお金が巨大な組織の中でどう管理され、流れているかを厳格にチェックし、透明性を高める体制を考えてほしい。

農協の正組合員は農業人口の減少で減り続け、09年以降は農業者以外の人もなれる準組合員の数が上回っている。組織維持のために農家以外から預金を集め、それを運用する金融事業の姿も、農協の原点や農協に対する様々な優遇策からみれば疑問がある。

全中は「農家が何を求めているかに応じ、農協は変わっていく」としている。6月には農業強化に向けた提言もまとめるという。農家の経営に役立ち、農業の強化に貢献する本来の目的に沿った組織に変わるべきである。

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