地震学者は情報発信に責任を - 日本経済新聞
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地震学者は情報発信に責任を

首都直下地震を起こす可能性がある東京都西部の立川断層をめぐり、東京大学地震研究所の教授らが「地中のコンクリートを断層と見誤った」と認め、謝罪した。文部科学省は再発防止のため、関係者から聴取を始めた。

この教授が「思い込みがあった」と釈明したように、調査が不十分なまま発表するというお粗末なミスである。だが地震学者の発言は人命や財産にかかわる。社会への影響の大きさを考えれば「初歩的なミス」では片づけられない。

なぜ誤認したか、情報発信は適切だったか、地震学者の責任とは何か。文科省だけでなく、日本地震学会がきちんと検証すべきだ。

この教授らは2月、立川断層で「横ずれの跡が見つかり、想定以上に大きな揺れになる恐れがある」と発表した。だが見学した土木関係者から「痕跡はコンクリートではないか」と指摘され、追加調査で誤認がわかったという。

科学者が自由に発言するのは大事だが、第三者の意見を聞いてからでも遅くなかったはずだ。地震学には不確実性がつきまとう。不確かであることを含めて、正確な情報を伝えるのが学者の責務だ。

昨年には別の東大教授が「首都直下地震が4年以内に確率70%で起きる」と公表後、「再計算したら50%以下だった」と修正した。生煮えの試算を公表し、数字が猫の目のように変わるのでは市民の不安を増すだけだ。

地震学会は東日本大震災を教訓に、「社会への的確な情報発信に努める」と約束したはずだ。受け手の立場を考えない情報発信が続くようでは、信頼回復は遠い。

立川断層を調べた教授は、原子力規制委員会で原子力発電所の活断層を調べている委員の1人だ。今回の誤認を受け、規制委の調査にも疑いの目が向けられている。

だが田中俊一委員長が指摘するように、規制委には分野が違う複数の専門家がチェックする機能がある。規制委は政治的な思惑に振り回されず、科学的根拠を踏まえて判断する姿勢を貫いてほしい。

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